(※写真はイメージです/PIXTA)

業務効率化を図るため、病院で推進される院内の「デジタル化」。しかしデジタル化を進める多くの病院では、背後に根深い闇があるために一向に進まないのが現状です。どのような闇なのでしょうか? 倉敷中央病院情報システム部長の藤川敏行氏が解決策とともに解説します。

いま求められる、「病院主導のDX」

[図表3]情報システム部門における重要な役割

 

ここまで、医療情報システム特有の問題を挙げましたが、これらに類する病院全体が抱える課題を積極的に解決していくうえで大切になることが、大きく2つあります。

 

1つは、ベンダー任せにしない「病院主導でのIT推進」。もう1つは、院内における「中立的な立場での全体最適化」です。

 

1.「病院主導でのIT推進」

「病院主導でのIT推進」とは、経営戦略と絡めたIT戦略計画や投資計画の策定、基盤や資源の調達などを指します。これらのものは、やはり病院が主導でやらないといけません。

 

たとえば、電子カルテベンダーがすべての部門システムを調達し、入れていくといったことも現場ではよく行われていますが、やはり本当は病院の職員がやったほうが絶対によい結果になります。「ベンダー任せにしない」ということが重要です。

 

特に最近、「医療情報技師」という資格取得者が増えてきており、「医療機関と企業の橋渡し」を期待され注目を集めています。しかし、現状ベンダー任せになってしまっている状態で病院から企業へと橋渡しをしたところで、病院のシステムがよくなるということはないでしょう。まずは組織体制から見直し、改善していくということが必要でしょう。

 

2.院内における「中立的な立場での全体最適化」

また、病院内における「中立的な立場での全体最適化」を図るという姿勢も欠かせません。病院という組織では、時折ITツールを“導入すること”が目的になっているような部署が出てくることがあります。

 

「RPAをやってみたい」「AIを試してみたい」「音声入力をやってみたい」などといった提案が出てきた際、それがよく考えられたもので、実効性を持つものであればよいのですが、ツールは導入することが目的ではありません。そのツールがいまある問題を解決するためのものかどうかをはっきりさせる必要があるでしょう。

 

もし必要があれば、「RPAではなく、別のソリューションを導入したほうがいいです」と言っていくことが重要です。

 

また、「部門や職種の発言力の強弱に影響されない」ということも重要でしょう。病院という職場はどうしても医師が頂点におり、看護師はより弱い立場にあるということになるわけですが、情報システム部門としては、「ここまでは医師の先生が入力して、あとは看護師さんが補う形のほうがいいのではないですか」といったことをあくまで中立的な立場で発言できる人が必要です。

 

また、たとえ弱い立場にあっても、病院のなかで活躍できるようにするためには「ITガバナンス」を確立させるのも大切だと考えます。

 

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次ページ病院組織における「ITガバナンス」とは?

*地域全体でナレッジを共有することで、医療と経営の質の向上を目指す「信州医療DXコミュニティ(SDCs)」第3回勉強会が2023年2月17日(金)に信州大学医学部附属病院で行われました。テーマは「DX推進の成否をわける重要テーマ!病院におけるDX人材の採用と育成」でした。同会でメイン演者を務めた藤川敏行氏(倉敷中央病院 情報システム部 部長)並びにSDCs幹事病院(長野県内の複数病院)の厚意により、医療機関向けサービス比較サイト「コトセラ」(エム・シー・ヘルスケア株式会社運営)が当日の講演内容を記事コンテンツとして編集しました。本記事はそれをもとに再構成したものです。
https://www.cotocellar.com/home

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