「小さな町の本屋」が“自費出版”“ローカルネタ”で「ヒット作」を次々と…常識を覆すのに成功した「納得の理由」

「小さな町の本屋」が“自費出版”“ローカルネタ”で「ヒット作」を次々と…常識を覆すのに成功した「納得の理由」
(※写真はイメージです/PIXTA)

本のネット通販が発達して「町の本屋」の生き残りが厳しい中にあって、岩手県盛岡市の「さわや書店」は、全国的に有名になった「文庫X」をはじめ、各種イベント企画、オリジナル商品の開発等を通じて新たな存在意義を切り拓いています。本記事では、さわや書店の外商部兼商品管理部部長である栗澤順一氏が著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、自費出版、地方出版でヒット作を生み出した背景について語ります。

地方出版でヒット作が生まれた背景

この会社の福田潔社長が、創業70周年を機に、創業者である祖父・福田留吉さんの想いをお客さまに伝えたいと考えられました。それまで社史をまとめていなかったことも理由のひとつでした。

 

社史の意味合いをもたせながらも、堅苦しいものではなく、誰にでも読んでもらえるようなものを残しておきたいということでした。

 

相談をもちかけられた私が、盛岡出版コミュニティーという出版社とのあいだをつないで編集にも協力し、本にしたのが『福田パンものがたり』です。

 

盛岡出版コミュニティーは、地元の書店員だった栃内正行(とちないまさゆき)さんが立ち上げた小さな出版社です。宮沢賢治や石川啄木にまつわるものを中心に郷土色豊かな本を出版しています。

 

盛岡は東京の出版社の方が驚くほどタウン誌が充実している一方で、書籍出版が弱いので、盛岡出版コミュニティーは今後が期待される存在になっています。

 

この本をつくっていたなかで、創業者の福田留吉さんが稗貫(ひえぬき)農学校(現・岩手県立花巻農業高等学校)に通っていた頃、宮沢賢治の教え子だったと知ったときには驚きました。

 

留吉さんがコッペパン作りを始めた際には、「空腹の学生たちのことを考えてかなり大きめのサイズにした」のだともいいます。そういう発想をもった背景にはもしかしたら宮沢賢治先生の教えがあったのではないか、とも勝手に想像を巡らせたものです。

 

本ができると、私もラジオや地元紙で紹介するなど、できる限りの宣伝をしました。その効果もあったのか、さわや書店本店やフェザン店では、長くランキング1位の座をキープするほどの売れ行きになりました。

 

自費出版と商業出版の中間のような性質の一冊です。

 

地方出版でこれだけのヒット作はなかなか出せるものではありません。福田パンがいかに地元で愛されているかをあらためて実感しました。

 

 

栗澤 順一

さわや書店

外商部兼商品管理部部長

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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