ネット注文で本が買える時代…名物書店員がコロナ禍のなかで見出した「町の本屋」が生き残る道とは

ネット注文で本が買える時代…名物書店員がコロナ禍のなかで見出した「町の本屋」が生き残る道とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット注文で本がすぐに届く現代において、「町の本屋」が生き残る術はあるのでしょうか。岩手県盛岡市の名物書店「さわや書店」の外商部兼商品管理部部長として新聞の書評執筆、ラジオ出演、イベント企画、オリジナル醤油の開発等を通じて新たな収益源を切り拓き、地域での存在意義を創り出している栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、新時代における本屋・書店員のあり方について考察します。

「読書のまち」でも…「町の本屋」を待ち受ける過酷な将来

いずれ本屋は町から消えてしまうのか?

 

このような疑問をもっている人も少なくないはずです。

 

本屋が消えることはなくても数が減っていくのは避けられない。

 

一書店員に過ぎない私もそう思っています。

 

私が勤めるさわや書店のホームグラウンドは岩手県盛岡市です。

 

盛岡は「読書のまち」です。2018年には、総務省による2017年家計調査の結果として一世帯当たりの本の購入金額が全国1位であると発表されました。2004年以来13年ぶりの1位返り咲きです。ほかの年にしても一貫して上位です。

 

出版販売会社の資料を開けば、盛岡市には27店もの書店があります。売り場面積が広い店も多いので、本好きにとってはたまらない街といえます。

 

しかし、これから何年か経てば、オーバーストア状態になってしまうのではないかとも危惧しています。もしかしたら盛岡市に書店は1店か2店しか残らないかもしれません。

 

私の不安が現実になってしまうとすれば、さわや書店が生き残る1店か2店になるためにはどうすればいいのか。

 

そういうことを考えるようにもなりました。

 

書店にとってコロナ禍によるダメージは大きなものがありました。

 

私が勤めているさわや書店でいえば、旗艦店であるフェザン店が入っている盛岡駅ビル「フェザン」が2020年の4月から5月にかけて3週間、休館になりました。ゴールデンウィークと重なったその期間中に営業そのものができなかったのです。

 

やはりさわや書店が入っている青森駅ビルの「ラビナ」も同じような状況でした。

 

休業中は売上げがゼロになるにもかかわらず、店員全員が休みを取るわけにはいきません。時短勤務のシフトを敷きながら、店内メンテナンスなどを行っていました。

 

駅ビルのフェザンでさわや書店は「フェザン店」、「Porta Magica(ポルタマジカ)」、「ORIORI(オリオリ)」の三店舗を展開していました。Porta MagicaとORIORIはそれぞれ雑貨店、CDショップという性格も有した店舗です。

 

コロナ禍が長期化するあいだにフェザン店以外の2店舗は残念ながら閉店となりました。

 

駅ビルが営業再開したあともなかなか売上げが回復しないこともあり、フェザン店1店舗に機能を集約することにしたからです。1店舗体制で経営を維持していくために辞めてもらったアルバイトもいました。

 

コロナウィルスに対する知識が十分ではなかった頃などは、誰が触ったかわからないという理由で本そのものが敬遠される面もありました。

 

病院や美容院など定期的に雑誌を取ってくれていたところが雑誌を置くのをやめてタブレットにするケースも増えました。それによるダメージが大きかったのは言うまでもありません。

 

書店に対してもコロナ禍は大きな災厄をもたらしたといえます。

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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