前代未聞…本屋で「醤油」がベストセラーを押しのけ「売上げ1位」に輝いたワケ

前代未聞…本屋で「醤油」がベストセラーを押しのけ「売上げ1位」に輝いたワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

岩手県盛岡市の「町の本屋」である「さわや書店」は、いわゆる「本屋」の枠を超え、新聞の書評執筆、ラジオ出演、イベント企画から、オリジナル商品の開発に至るまで活発な活動により、地域での存在意義を創り出しています。「さわや書店」外商部兼商品管理部部長の栗澤順一氏が、著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)において、「オリジナル醤油」の開発にかかわり大ヒットさせた事例について語ります。

「全国で初めて書店で販売される醤油」を開発

書店は本来、全国どの書店でも同じ商品(同じ本)を同じ価格で販売していくビジネスです。オリジナル商品をつくろうと考えた場合には個性を出すのが難しく、しおりやトートバッグなどの定番商品におよそ限られます。

 

そうなると、どうしてもインパクトにかけてしまいます。そこで、さわや書店では「なぜ、書店がそんなものを!?」という商品の開発にも関わってきました。

 

なかでも意外性が際立っているのは「醤油」です。

 

地元の「浅沼醤油店」の浅沼宏一社長から「醤油を書店で販売したい」という相談を受けたのが事の始まりでした。

 

話を聞いてみると、岩手県内では脳卒中で亡くなる人が多いということから県内の醤油醸造会社が合同で減塩醤油を開発したことが発端になっていました。

 

塩分を大幅カットしたうえにカリウムの働きにより塩分の体外排出を促す画期的な商品が完成していたのです。

 

この商品に関しては、とにかく多くの人の手に取ってもらいたいということから、容器はペットボトルにして、地元のゆるキャラ「わんこ兄弟」を使ったデザインに仕上げていました。若者も手に取りやすいポップな醤油は大きな話題になりました。

 

それならそれでいいではないかと思われるかもしれません。

 

ただ、浅沼社長としては、この減塩醤油の効能をパッケージに詳しく書き込めなかったことが心残りになっていたというのです。そのため、効能をきちんと記した別バージョンの商品をつくってはどうかと考えられました。

 

しかし、堅苦しすぎるパッケージになってしまえば、スーパーなど量販店で売るには似つかわしくない商品になってしまいます。そこで岩手大学でデザインを専攻している田中隆充教授に相談したところ、「効能を強調したいなら、本をイメージしたパッケージにしてはどうか」というアイデアが出されたそうです。

 

その段階で浅沼社長は、「それならば、書店で売るのがいいのではないか」と発想を飛躍させました。

 

その話を私に持ちかけてきてくれたのです。当然ながら、悩むことなく協力させてもらうことにしました。そして印刷会社の営業担当者なども加えたプロジェクトチームをつくって、具体的なパッケージを考えていったのです。

 

つまり私は、醤油そのものの商品開発に加わったわけではありません。正確にいえば、私が開発に関わったのは醤油のパッケージです。

 

打ち合わせと試作を重ねた末に2017年6月に『減塩新書 いわて健民』として発売できました。

 

辞書の背表紙をモチーフにして、書店の店頭に違和感なく溶け込めるパッケージになりました。帯が付いているイメージのラベルで、背表紙にあたる正面には「食塩摂取を減らせる決定版。」という医学博士の推薦文が入ります。

 

側面には、洒落をきかして「初版 第一刷発行 さわや書店」と入れました。

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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