「小さな町の本屋」が“自費出版”“ローカルネタ”で「ヒット作」を次々と…常識を覆すのに成功した「納得の理由」

「小さな町の本屋」が“自費出版”“ローカルネタ”で「ヒット作」を次々と…常識を覆すのに成功した「納得の理由」
(※写真はイメージです/PIXTA)

本のネット通販が発達して「町の本屋」の生き残りが厳しい中にあって、岩手県盛岡市の「さわや書店」は、全国的に有名になった「文庫X」をはじめ、各種イベント企画、オリジナル商品の開発等を通じて新たな存在意義を切り拓いています。本記事では、さわや書店の外商部兼商品管理部部長である栗澤順一氏が著書『本屋、地元に生きる』(KADOKAWA)から、自費出版、地方出版でヒット作を生み出した背景について語ります。

本の出版もお手伝い

本を出したいと考える方がいた場合、出版協力もしてきました。

 

岩手には「ベアレン醸造所」という地ビールの会社があります。地ビールの低迷期に友人同士で創業した会社で、2015年には「世界に伝えたい日本のクラフトビールコンテスト」でグランプリも取った実力ある醸造所です。

 

ただし、名前が知れるまでの道のりは平坦なものではなく、さまざまなドラマがありました。

 

ベアレン醸造所の嶌田洋一(しまだよういち)社長はそうしたエピソードをネットに書いてきていたので、それをまとめた本を出そうと考えていました。

 

このとき、「どこかの出版社から出すことはできないでしょうか」と相談を受けた盛岡駅ビルフェザン店店長の田口幹人さんと、当時フェザン本館にあった体験型店舗「ORIORI」店長の松本大介さんがポプラ社とのあいだをつないだことによって、出版が実現しました。それが『つなぐビール 地方の小さな会社が創るもの』です。

 

これ以前に田口さんは、笹原留似子さんが『おもかげ復元師』を出版する際にもポプラ社とのあいだを仲介していたので、その縁が役立ったようです。笹原さんは震災後のボランティアで300人以上の遺体を復元された方です。

 

『つなぐビール』の発行にあたっては、仕掛けも施しました。

 

まずフェザン店の店頭でこの本を買っていただいた方には先着順の限定でベアレンビール一瓶をプレゼントしました。また、ベアレン醸造所直営のビアレストランでは嶌田専務のトークショー&サイン会を行い、大盛況となりました。

 

工場の敷地内では毎年秋になるとビアフェスタ「オクトーバーフェスト」を行うので、その際にはブースをつくって、本書『つなぐビール』を販売しました。

 

本を出す以上、なんらかの展開は考えたいものですが、このときはベアレン醸造所の協力もあり、いろいろと盛り上げていくことができました。

 

アルコールの力はやはり強いといえます。

自費出版からヒット作が誕生

私自身が出版に携わった本としては、盛岡市の「ハンバーグのベル大通店」でドアマンをしていた佐々木重政さんの『はつらつ人間力』が挙げられます。

 

この店舗(旧名、ハンバーガーとサラダの店 べる)は、びっくりドンキーの実質上の一号店として知られていて、佐々木さんは創業者の庄司昭夫さん(故人)とともに店を大きくした伝説のスタッフです。

 

この店の初代店長を務め、定年退職したあと、ドアマンとして復帰し、街の顔になっていました。

 

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本屋、地元に生きる

本屋、地元に生きる

栗澤 順一

KADOKAWA

「待ちの本屋」から「使ってもらう本屋へ」――。今なすべきことは何か。 いずれ本屋は町から消えてしまうのか? 訪れるお客様を待つだけの商売はジリ貧のご時世。全国区の名物書店の外商員が手掛けたのは「本とのタッチポ…

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