(写真はイメージです/PIXTA)

東京五輪に続く大規模イベントとして注目が集まる、大阪・関西万博。そもそも、万博とはなんなのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の小原一隆氏が解説します。

1―はじめに

2025年大阪・関西万博の開催まで2年に迫った。2025年4月13日から10月13日まで、大阪市夢洲(ゆめしま)*1で開催される予定だ。日本においては2020年東京オリンピック・パラリンピックに次ぐ大型の国際的イベントである。近時は新型コロナ禍によるインバウンドの休止から次のフェーズに入り、万博開催の頃には更に多くの外国人観光客の入国も考えられ、活況を呈することが期待される。

 

開催地である大阪市や関西地域では万博の盛り上がりを通じた経済の活性化や、最新技術の展示により明るい未来を身近に感じさせ、国民の気持ちを奮い立たせる効果を期待しているものと思われる。長きにわたり諸外国に比べて経済成長の低調が続くことから、国民の気持ちも塞ぎがちのところだが、大阪・関西そして日本の力を再確認する良い機会であると考える。

 

本稿では、万博の基本知識について触れ、今後増加する万博関連報道その他の情報に接するに際しての前提として資するような情報整理をする。

 

*1:大阪市此花区に所在する人工島。2008年オリンピック・パラリンピックの大阪誘致の際の会場予定地であったが落選し、活用方法が模索されていた。本稿では触れないが、統合型リゾートの候補地でもある。

 

2―万博とは何か

万博とは万国博覧会の略である。BIE(博覧会国際事務局)*2の承認のもと、国際博覧会条約*3に基づき開催される国際博覧会を指す。現在は、登録博覧会(exposition enregistrée、以下「登録博」)と認定博覧会(exposition reconnue、同「認定博」)が存在する*4

 

国際博覧会条約によれば、「博覧会とは、名称のいかんを問わず、公衆の教育を主たる目的とする催しであって、文明の必要とするものに応ずるため文明の必要とするものに応ずるために人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくはそれらの部門における将来の展望を示すものをいう。博覧会は、二以上の国が参加するものを、国際博覧会とする。」と定義されている。

 

第1回は、1851年にロンドンで開催された。"The Great Exhibition of the Works of Industry of all Nations"と銘打って、産業革命を背景にし、英国の「世界の工場」としての力を誇示するものであった。万博というコンセプトは好評を博し、その後各国で開催された5。

 

日本開催の万博は(図表1)のとおりである。

 

【図表1】
【図表1】

 

日本での登録博は「2005年日本国際博覧会」(愛・地球博)と、「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)がある。1988年の条約改正前の旧カテゴリー分類では、一般博覧会(exposition universelle、以下「一般博」)と特別博覧会(exposition spécialisée、同「特別博」)が存在した。条約改正により、それぞれの後継が登録博と認定博となった。

 

旧一般博としては、アジア初の万博である「1970年日本万国博覧会」(大阪万博)があり、6,400万人を超える来場者を集め、20世紀で最も多くの人が訪れた万博となった。その後旧特別博として、「1975年沖縄国際海洋博覧会」(沖縄海洋博)、「1985年国際科学技術博覧会」(つくば万博)および「1990年国際花と緑の博覧会」(花博)が開催された。

 

登録博は開催期間が6週間以上6ヵ月以内で、二つの登録博には少なくとも5年以上の間隔を置くことが定められている。2025年の大阪・関西万博の前は2020年ドバイ万博*6であった*7

 

認定博は開催期間が3週間以上3ヵ月以内で、一つの参加国に割り当てられる面積が1,000m2以内で、二つの登録博の間に1回だけ開催できると定められている。また、明確なテーマを掲げることも要件に含まれる。例えば直近の認定博の開催事例は2017年のカザフスタン(アスタナ)であったが、テーマは「未来のエネルギー」であった。

 

BIEではこれらとは別途、装飾美術及び現代建築に関するミラノ・トリエンナーレ*8および国際園芸博覧会の一部*9も所管している。園芸博覧会の例は、1990年に大阪で開催された国際花と緑の博覧会や、2027年に横浜で開催が予定される横浜国際園芸博覧会が挙げられる。園芸博覧会の所管は国際園芸家協会であるが、最上位カテゴリーのA類Ⅰを充足し、かつBIEが承認すると、国際博覧会条約に基づく国際博覧会の一つとして取り扱われる。

 

【図表2】
【図表2】

 

また、オリンピック・パラリンピックのように都市が主催するのではなく、政府が主催する国家プロジェクトである。ただし、国際博覧会条約第10条の2において、「招請国政府がその開催者でない場合には、国際博覧会を開催する法人は、その開催につき当該政府によって公式に認められなければならず、当該政府は、当該法人による義務の履行を保証する。」と規定されている。これに基づき、大阪・関西万博の主催者は万博特措法*102025年日本国際博覧会協会(以下万博協会)*11が指定され、登録申請書において、日本国政府が当該法人による開催国の義務の履行を保証すると明記している。

 

*2:Bureau International des Expositions (仏)の略。パリ本拠の政府間組織。全ての国際博覧会の監督・規制等を行う。国際博覧会の品質と成功を保障し、主催者と参加者の権利を守り、教育・革新・協力というコアバリューを維持することを使命とする。開催国の選定、万博運営、国家ブランディング、パブリックディプロマシー(伝統的な政府対政府の外交と異なり、広報や文化交流を通じて民間とも連携しながら外国の国民や世論に直接働きかける外交活動)に関する専門知識の候補国・開催国への提供等を行う。加盟国は現在171ヵ国。日本は1965年1月8日加盟。

*3:国際博覧会に関する条約。当初1928年11月にパリで署名された。

*4:国際博覧会条約 第2条(条約の適用範囲)の2。

*5:当初は開催国が単独でルールを決定し、透明性の欠如等が問題となったことから、その後監督・規制の為にBIEが設立された

*6:実際には新型コロナ禍の影響で日程が1年延期され、2021年10月から2022年3月までの開催となった。

*7:次回は2030年開催予定で、現在選考中。2023年後半にBIE加盟国の投票で決定予定。候補国は韓国(釜山)、イタリア(ローマ)、ウクライナ(オデーサ)、サウジアラビア(リヤド)。当初ロシア(モスクワ)も立候補していたが、ウクライナ侵攻による西側諸国の反ロシア的行動の影響を理由に自ら取り下げた。

*8:イタリア・ミラノで開催される美術展覧会。トリエンナーレとはイタリア語で「3年に1回」という意味だが、実際には不定期開催。1933年開始。

*9:国際園芸家協会がA類Ⅰ(50㌶以上等の要件を充足)に分類し、BIEが承認するものは、万博を名乗ることが可能。異なる国において開催される場合には2年以上の間隔を、同一の国において開催される場合は10年以上の間隔をおくことが条件とされる。

*10:平成三十一年法律第十八号 令和七年に開催される国際博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律。

*11:経団連等経済団体と大阪府・市が社員総会の構成員。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月24日に公開したレポートを転載したものです。

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