(写真はイメージです/PIXTA)

観光庁が3月8日に行った交通政策審議会観光分科会では、「観光立国推進基本計画(案)」が提示され、「持続可能な観光地域づくり」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の3つがキーワードとして示されました。具体的な目標として2025年に「観光客数は2019年の水準越え」、「訪日外国人旅行消費額単価の2019年水準に対し25%増」などが挙げられています。日本におけるインバウンドの状況と課題について、ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が解説します。

新たな観光立国推進基本計画について

観光庁が3月8日に行った交通政策審議会観光分科会では、「観光立国推進基本計画(案)」が提示され、「持続可能な観光地域づくり」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の3つがキーワードとして示された。同案の内容は3月末にも閣議決定される見通しである。

 

2016年に公表された政府目標は2020年までに訪日外客数が4,000万人、訪日外国人旅行消費額(以下、旅行消費額)が8兆円であった。金額(消費額)についても言及されていたものの、人数(客数)が注目される傾向が強く、2019年の実績値は訪日観光客数が3,188万人と2020年目標の達成間近であったが、旅行消費額は4.8兆円に留まった。

 

今回の案はここからは大きく転換し、人数(客数)ではなく金額(旅客消費額)を重視する内容となっている。具体的な目標として、2025年に「観光客数は2019年の水準越え」、「訪日外国人旅行消費額単価20万円/人(2019年15.9万円/人に対し25%増)」などが、早期に達成を目指す目標として「訪日外国人旅行消費額5兆円」、「国内旅行消費額20兆円」が挙げられている。

世界のインバウンド客数と旅行消費額の回復状況

日本の2022年の訪日外客数は、383万1,900人(2019年比で▲88.0%)であった。また旅行消費額は速報値の合計が8,991億円(2019年比で▲81.3%)、訪日外国人旅行消費額単価(以下、旅行消費額単価)は観光庁の公表値から概算すると23.4万円(2019年比+47.9%)である。現在の日本の観光回復状況は、世界と比較するとどうだろうか。

 

2022年通年の各国・地域における外国人訪問客(以下、インバウンド客)の数および旅行消費額の公表はまだ先である各国・地域も多い。しかし、2022年の途中までは、多くの国・地域の確定値が国連世界観光機関(UNWTO)から公表されている。従って、「最新の公表値の2019年同期比」であれば、各国・地域の観光市場がどのくらい回復しているかの比較は一応可能である。

 

「最新の公表値の2019年同期比」を確認してみると、フランス・トルコ・デンマークなどがインバウンド客数、旅行消費額とも2019年の水準を回復したとみられる。また、スペイン・イタリア・メキシコなどは、インバウンド客数は未だ回復していないが、旅行消費額単価の上昇の恩恵を受け、旅行消費額は回復しているようだ。

 

しかし、2022年の日本の訪日外客数と旅行消費額は両方とも2019年の水準を大きく下回っており、他国・地域と比べて極めて低い水準にとどまっている(図表1)

 

なお、UNWTOの公表は、インバウンド客数と旅行消費額それぞれが上位50位までとなっており、この範囲で両方にランクインした国のみの比較であり、中国などはここに入っていない点には注意が必要である。また、本稿内の各数値は海外から各国・地域へのインバウンド客についての数値であり、各国・地域の国内旅客の分は含まれていない。

 

【図表1】
【図表1】

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年3月24日に公開したレポートを転載したものです。

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