(写真はイメージです/PIXTA)

今年2月、某芸能人が、検索で出てきた画像をSNSに無断転載し著作権侵害をしていたとしてニュースになりました。このように、度々報道される「著作権違反」のニュースですが、「どこまでがOKで、どこからがNGか」著作物の線引きのルールがいまいちわかっていないという人も多いのではないでしょうか。今回は、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が、法律にもとづく著作物の引用についてくわしく解説します。

引用元の明示、適切な“主従関係”…著作物の引用ルール

著作権が発生している著作物を引用する際のルール(32条)は、次のとおりです。これらのルールから外れてしまうと引用が成立せず、著作権侵害となる可能性がありますので、注意しましょう。

 

著作物が公表されていること

1つ目のルールは、引用元となる著作物が公表されていることです。引用元となる著作物が非公開である場合には、たとえ他の引用ルールを守っていたとしても、著作権侵害となります。

 

また、この場合には著作権侵害に加え、著作者が公表するかどうかや公表する方法などを決める権利である「公表権」を侵害する可能性も高いでしょう。

 

公正な慣行に合致すること

2つ目のルールは、引用の公正な慣行に合致することです。公正な慣行としては、主に次のものが挙げられます。

 

■引用部分を区別する

引用する際には、どこが引用部分であるのかがわかるよう、区別して表記しましょう。たとえば、引用部分を「“ ”」マークで区切ったり、その部分のフォントを変更したりすることなどが挙げられます。

 

■引用元を明示する

引用の際には、引用元を明示しましょう。引用元として表記すべき内容は、次のとおりです。

 

・引用元が書籍の場合:タイトル、著者名、発行年、該当ページ
・引用元がウェブサイトの場合:ウェブサイト名、URL

 

■改変しないこと

引用をする際には、元の文章を改変してはなりません。改変をした場合には引用のルールから外れ、著作権侵害となってしまいます。引用元の文章などに修正を加えることなく、そのまま記載しましょう。

 

引用の目的上正当な範囲内で行われること

引用の3つ目のルールは、引用がその目的に照らして正当な範囲内で行われることです。本来、引用とはその引用元の文章を自分の意見を補足するために利用したり、その引用元の文章に適切な批判を加えたりするために行うものです。

 

そのため、次の2点がポイントとなります。

 

1.不正な目的でないこと

引用が不正な目的で行われている場合には、著作権侵害となり得ます。たとえば、ウェブサイト上での広告収入(いわゆる「アフェリエイト」収入)を得る目的で多数の引用を行う場合などには、引用の目的上正当な範囲内であるとはいいづらく、著作権侵害となる可能性があるでしょう。

 

2.自社コンテンツが主であること

先ほどもお伝えしたように、引用は本来、その引用元に記載されている内容を自分の意見を補足するために利用したり、その引用元の文章に適切な批判を加えたりするために行うものです。

 

この点を踏まえれば、当然ながら自社コンテンツが「主」であり、引用元の文章は「従」であるはずです。

 

そのため、たとえばある弁護士事務所のお役立ち記事などをそのまま何千文字分もコピペして、最後に「このような情報がありますので、皆さんも知っておきましょう」と補足する程度では、「主」と「従」が逆転しているため適切ではありません。

 

引用元を記載したり引用部分を区別したりといった形式面のみさえ守ればよいわけではありませんので、この点はよく理解しておきましょう。

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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