Q3. 「お一人様」でいることの悩みや不安、解消策
この質問項目(Q3)への回答が最も多かった。孤独や不安を抱えていることがうかがえる。
「お一人様」の孤独や不安
・孤独を感じることは少なくないし、特に病気になると気弱になる。
・社会や周囲の人がプレッシャーをかけてくることもある。独身のままでいることは、主流の家庭観とは合っていないために、家族からの口煩さに耐えなければならない。
・大学の同級生が家族を持ち、恵まれた生活を送っていると、一人の人間として居心地の悪さを感じてしまう
・仕事がうまくいかない時や体の調子が良くない時でも、生活のために休みを取ることができない。独身者はリスク対応力が低い。
・安定した収入がなくなった時のことを考えると不安。・このまま年齢が高くなると、良い結婚相手と出会う可能性は少なくなり、また、出産も難しくなる。
悩みへの解消策とは?
・ペットが精神的な支え。
・孤独を解消するために交流の場に行くのは時間も精神的なエネルギーも必要なので、ペットと暮らすのが一番楽。
・歴史や文化の勉強会で脱日常しながら交流。
・結婚相手探しで「AIによるお見合い」を利用している。
・恋愛相談。
Q4. 独身者向けにサービスを行う企業へのアドバイス
・共感できる理念や技術・サービスを探している。サービスの細部で顧客のことを考えていると感じる……これこそが理念への共感だと思う。
・独身者はソーシャルネットワークのヘビーユーザー。友人のコミュニティ(朋友圈)で自分の生活スタイルを共有することも多い。したがって、口コミに乗りやすい価値観を示して共感を得ることが重要だと思う。
・仕事のプレッシャーは高く、残業時間は長く、自由に使える時間は少ないので、時間の節約をお金で買うことは厭わない。だから、購入が煩わしくなく時間が正確なサービスにこだわる。
・独身の若者の消費支出の大部分は、実際には社交の場、学習、ペットなど精神的な安定と、結婚相手探しに費やしていると思う。
・私たち独身の若者は未来を買うためにお金を使うという意識が強い。フィットネス、今の仕事以外の専門性を身につけるための学習や研究の場。
・パーソナル化、ニッチ化した消費がさらに増加するのではないか。
・日本こそが「一人食事空間」のルーツですよね! 日本に何度か旅行に行ったが、日本の飲食店は一人でも食べやすいと思った。
日本の「お一人様」向けサービスは、中国でも需要がある
中国の「お一人様」は今の生活を楽しむ「独身貴族」なのではと先入観を持って調査に臨んだが、彼らの実像は、プレッシャーの中で忙しく働き、孤独や将来への不安を抱える“普通の人”だった。
そんな彼らが求めるサービス・商品に共有しているのは「本物志向」であり、その背後にある企業の経営理念への共感である。また、「日本こそが独身者向けサービスの先進国でしょ!」という回答も複数見られた。
調査に先立ち、中国の大手プラットフォーマーにも相談したが、特に「お一人様」向けを意識してはおらず、顧客のニーズを細かいセグメントで正確に把握して、それに合ったサービスをスピーディに開発・提供することに徹しているとのことだった。
日本企業は、自らの経営理念を口コミなど中国市場に合った方法で伝えて共感を得ること、そして、サービス品質へのこだわりの強い「お一人様」が「本物だ」と感じるサービス・商品を提供し続けるという経営の基本を中国でも実行することが重要だと考える。
調査対象者と方法
[対象者]
筆者の知人6名および友人の紹介6名
IT、金融機関、外資系製造・サービス企業に勤務、または語学教師などの高学歴者[方法]Q1~4に対して回答を受領し、回答内容に基づきWeChatでさらに質問(回答率7/12)。友人の紹介者は友人経由でコミュニケーションをとった。
なお、当初協力を依頼した複数の知人(特に女性)から、「何で私にそんなこと聞くの!?」とお怒りを買い、難航する中で既存の知人以外にもヒアリング対象を拡げ、回答してもらいやすい質問項目づくりに試行錯誤を重ねて進めた。
[調査期間]
2021年9~10月
なお、本文は、日本マーケティング協会:『マーケティングホライズン』(2021 Vol.12)「中国のお一人様経済圏:その背景と今後の可能性」への寄稿を加筆修正して岡野寿彦氏の著書『中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ』(日経BP 日本経済新聞出版)に収録されたコラムを抜粋したものです。
岡野 寿彦
NTTデータ経営研究所グローバルビジネス推進センター
シニアスペシャリスト
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