「親はすべてお見通しではない」と気がつくタイミング
では、すべてお見通しではないということをどうやって気がつくのでしょうか。ほしいと思っているおもちゃを親にねだるという場面を想像してください。
子どもが、いちばんほしいと思っているものはねだっても買ってもらえないと思って、2番目にほしいものをねだったとします。予想どおりそれを買ってもらったとき、「これがいちばんほしかったものだよね」と言われたら、心のなかで「ちがう! いちばんほしいものじゃないのにわからないの?」と思ってしまうでしょう。
話を「嘘」に戻します。やがて、嘘を操るようになることがあります。
嘘の背景には、自分や大切な誰かを守るため、何かを失わないため、試すため、その場しのぎのため、欺き陥れるため、傷つけるため、何かを得るため、何かを壊すため、そして嘘だと思っていないため、などさまざまなものがあります。
しかし、どのような理由があるにせよ、嘘をつくことで事態がうまくいかなくなるでしょう。どんな些細なことであっても本当のことを言えたことをまずほめられ、怒られるのではなく、穏やかに叱られ、嘘をついた理由について尋ねられ、これからどうすればよいのかを一緒に考えてもらえるような対応が積み重なることが必要と思います。
補足しますが、再会の約束「また必ず会おうね!」とか、相手を心配させない約束「無理しないで頑張るから!」などは、たとえ果たせない約束になったとしても、互いの心の支えになるかもしれません。
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松田 文雄
東海大学医学部医学科卒業後、国立精神神経センター診断研究部流動研究員などを経て、東海大学大学院医学研究科修了。
現在、医療法人翠星会松田病院理事長・院長。精神科・児童精神科医師。
医学博士。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医。日本精神神経学会指導医。子どものこころ専門医。