(※写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナ侵攻から約1年。地政学的リスクに緊張が高まるなか、「日本は軍事的にアメリカに隷属している」「日本も軍事力をつけ独立しなければならない」といった言説が一部で力を強めています。しかし、東大名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏は、明確にこれを否定します。「日米同盟」に多くの人が持つ「誤解」と2人の捉え方について、詳しくみていきましょう。※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

“日本はアメリカに依存している”という「誤解」

宮澤:政治家でも言論人でも一般人でも、世の中には「保守派」と呼ばれる人たちがいます。そういった人たちに向けたいわゆる保守系の本というのは、だいたいが親米保守か反米保守に大別されます。

 

そういった種類の本は諸先生方が沢山上梓(じょうし)されておられますので、今回の対談では、趣を変えまして、親米にも反米にも徒(いたずら)に偏らない対談をしてみたら面白いのではないかと思いまして、対談を進めたいと思っております。

 

重要なのはバランスです。親米保守であろうと反米保守であろうと、逆の言い方をすると、どうしてそこまでアメリカを重視しているの? という話になります。どちらにしても、「日本はアメリカに依存している」と信じ込んでいます。

 

アメリカと日本はもはや対等な関係です。対等ということを前提として進めてしまう方がむしろ楽です。外交において依存している、貿易において依存しているなどなど、細かい話はいろいろあります。しかし、それはちゃんと実務レベルで今まで解決してきている。例えば、アメリカのドルを裏支えしているのは、事実上、日本の円です。

 

2021年10月に発足した岸田文雄首相の内閣は、経済安全保障などということを今ごろになって、私からすれば半世紀位遅れていると感じるようなことを言い始めました。しかし、すでに「日米同盟の一番重要な骨」のひとつが経済安全保障なのです。

 

日米同盟は、経済安全保障と軍事のふたつがちゃんと成り立っている。互換的に、互恵的に成り立っているから、日米同盟はちゃんと機能していると言うことができます。実務の場では、そういう前提でやっていかないと仕事として進みません。

 

そろそろ親米保守と反米保守という狭い視点から脱却しないといけない。日本はアメリカに寄りかかっているという前提あるいは一般常識を、これからドクター矢作と一緒に崩していこうと思います。日米関係は、日本を軸に置いて考えていく方が実はわかりやすいのです。日本がアメリカの遠征軍を雇っている。そういう感覚で見ていく方が話は早い。

 

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※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

矢作 直樹

ワニブックス

「日本にウクライナ侵攻の悲劇は起こらない!」……アメリカが諸外国の侵略から日本を絶対に守る理由とは? 東京大学名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が、6つのキーワードから世界…

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