「日米同盟」を正しく理解しているか?
アメリカが日本を「守る・守らない」という議論は“的外れ”
矢作:さて、本題に入りたいと思いますが、そもそも、日米同盟は正しく理解されているのか、というところから始めたいと思います。
よく、こういう言い方を聞きます。「日米関係については様々な議論があるが、要は、いざとなったらアメリカがちゃんと日本を守ってくれるかどうかである」。
守ってくれるも守ってくれないもない。この点がどうも理解されていないようです。日米安全保障条約という条約があって実定法としての日本国憲法という国法があります。ですから、当然、日本とアメリカの軍事関係は日米合同軍ということになり、日米合同軍の統括のなかで自衛隊も動きます。
法の建付上では自衛隊のトップは首相ですが、極論をいうと、アメリカから見れば日本の首相に別に権限などはありません。アメリカが上から命令すれば終わりです。外務省は治外法権を否定していますが、アメリカの基地には治外法権的な特権が適用されます。したがって、基本的には、アメリカから見た日本というのはアメリカなのです。
アメリカは、「日本はよそ者」という目では見ていません。守ってくれる、守ってやる、という関係ではないのです。
日本の評論家たちがよく、「いざとなったらアメリカは日本を守ってくれない」などと言うのは、「アメリカと日本は別々のものである」と捉えているからです。
例えば1950年に勃発した朝鮮戦争では、日本はアメリカの前線基地となり、兵站(へいたん)基地ともなりました。そんな日本をアメリカが他に渡すはずがありません。こういったことは、別に軍事の知識などなくても、歴史的な流れを見れば明らかです。
この点を誤解している日本人が多いように思います。いざとなったら守ってくれるかどうかわからないからアメリカにまったくおんぶに抱っこじゃ困る、だから核武装をしないといけない、などと真顔で言い始めたりします。だいいち、アメリカが基地を置いているのだから核などというものはとうの昔から日本にあるのに、です。
守ってくれる、守ってくれない、という議論は的外れです。私たち日本人が、日米同盟の中で自分たちの役割を認識しながら我が国を自分で守る、という意識を持つことが大切です。