「空き家」をいますぐ売らないと大損する理由…期限が迫る「3,000万円控除特例」と政府が目論む「固定資産税4倍」【元国税専門官が解説】

「空き家」をいますぐ売らないと大損する理由…期限が迫る「3,000万円控除特例」と政府が目論む「固定資産税4倍」【元国税専門官が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家を「買う」ときの節税方法として住宅ローン控除がありますが、住宅を「売る」ときにも、節税効果の高い特例がいくつかあります。本記事では元国税専門官である小林義崇氏が、新刊著書『会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて』(PHP研究所)から、家を売るときにかかる税金と、それを抑えるための「特例」について、場面ごとに整理して解説します。

自宅の売却益は3,000万円まで非課税

先ほど、譲渡所得がプラスになったら税金がかかると説明しましたが、売却した物件を居住用に使っていた場合、節税効果の高い特例を使えます。

 

居住用の物件に使える特例はいくつかあるのですが、本書では代表的な「3,000万円控除」について説明します。

 

3,000万円控除は、譲渡所得が最大3,000万円まで差し引けるという特例です。つまり、譲渡所得が3,000万円以内であれば、この特例を使って税金をゼロにできます。

 

また、譲渡所得が3,000万円を超えたとしても、超えた部分について「軽減税率の特例」を使える可能性があります。

 

この特例も居住用の物件を売ったときに使えるもので、売った年の1月1日時点で、売った家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えているなどの条件を満たせば、譲渡所得にかかる税率が下がります。

 

ただ、この2つの特例には大きな注意点があります。それは、「住宅ローン控除と併用できない」という点です。

 

たとえば、自宅を売却して、新居に買い替えたとしましょう。このとき、売った自宅に3,000万円控除や軽減税率の特例を使い、買い替えた自宅に住宅ローン控除を使いたいと思っても、これは認められません。

 

3,000万円控除などの売却時の特例を使うか、住宅ローン控除を使うか、どちらかを選択しなくてはならないのです。

 

このどちらが有利かは収入などさまざまな要素に左右されるので一概には言えません。選択次第で税額に大きな差が出てくるおそれがあるので、できれば税理士にあらかじめ相談して判断するのが望ましいです。

実家が空き家になるときの対処法

3,000万円控除は、基本的には所有者が住んでいた家を売った場合に使える特例です。ですから、たとえば一人暮らしだった親が亡くなって空き家になった家を売っても、本来は3,000万円控除の対象にはなりません。

 

ただし、特例措置として、2016年4月1日から2023年12月31日までの間に売った場合、親が住んでいた空き家に3,000万円控除が使えます。そのための主な条件は次のとおりであり、建物が条件を満たしていれば敷地も含めて3,000万円控除の対象となります。

 

〈特例の対象となる建物〉

・1981年5月31日以前に建築された

・区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)ではない

・相続の開始の直前において被相続人が居住し、被相続人以外の居住者はいなかった

 

この他にも細かい条件がいくつかありますが、とくに注意したいのが「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売らなくてはいけない」というものです。

 

この特例のそもそもの期限である2023年12月31日までに売ることに加え、親が亡くなって3年以内に売ることも必要なのです。

 

なお、このような期限つきの特例は延長されることが多く、2024年以降も利用できる可能性がないわけではありません。国税庁ホームページなどで最新情報をチェックしておきましょう。

 

空き家は全国的に増えており、日本政府は問題視しています。

 

2022年12月の報道では、管理が不十分な空き家については固定資産税を上げる方向で検討が進められているとのことです。これが実施されると、平均的な宅地の固定資産税が4倍程度に増えると試算されています。

 

使わない家の税金を払い続けるのは明らかに無駄なので、早めに売却を進めたいところです。

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会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

会社も税務署も教えてくれない 会社員のための節税のすべて

小林 義崇

PHP研究所

自動的に適用される節税の制度が次々と廃止され、 任意で使える節税の制度が増えている。 だからこそ、知識の違いで税金の負担に大きな差が出る! 2022年度の租税負担率と社会保障負担率を合わせた国民負担率は5割近くに上…

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