9割以上が国内で消化される日本国債
政府に騙されやすい国民の割合が低い国は、先進国ではオーストラリアである。オーストラリア国民の国債保有率は16%にすぎない。75%は外国人が持っている。
政府に騙されないことにかけては、フランス人もイタリア人も負けてない。フランス国債の60%は外国人が持っており、イタリア国債は、50%は外国人が持っている。
ところが日本国債の外国人保有率は8・4%にすぎず、アメリカ政府が日本国債を保有する割合は、その8・4%のうちほとんどないといっていい。
日本政府はアメリカに脅されて大量のアメリカ国債を買い、今度はその日本政府が一番騙されやすい日本国民を騙して、大量の国債を国民に買わせているという構図。つまり、一番ババを引くのは日本国民。
インフレ率・金利・発行総量で決まる米国債の価格
アメリカが外国政府に命じて買わせているので、アメリカ国債は、約35%は外国人が買っている。その35%のうち、日本国が5分の1を持っている。
アメリカ国債の価格は、3つの要素で決まってくる。インフレ(物価上昇)、金利、そして今までの国債発行総量である。
まず、インフレについて見てみよう。国債の償還金額は固定され、利付き国債の利率も固定されているため、インフレが起きたり、金利が上がったりした場合には、国債は全く魅力のない投資対象となる。
国債も金利を上げないと、見向きもされない。
もちろん、あまりにも大量に国債が出回っていると、返済に不安が生じるので誰にも買われない。買われないということは、つまり価格が下がるということであり、発行金利が上がるということである。
アメリカ国債の利回り、すなわちアメリカ国債を買った場合に買い手が受け取る利益率は、アメリカの民間人が銀行から借りるローンの金利に連動している。一般にアメリカ国債の長期金利という場合、30年もののアメリカ国債の利回りが指標になる。
アメリカ政府は、国民にもっとお金を使わせ税収を上げるためにローンの金利を下げる必要があり、そのためには国債の利回りを下げなければならなかった。
「国債=安全」と国民に向けて喧伝
日米の政府が使っている手口を紹介しよう。
国債の利回りが低いのに大量の国債を発行する。そして、それを売りさばくのに日本政府は、2つの方法を使う。詐術と強迫である。
詐術とは、「国債以上に安全な資産はない」と国民を欺くことである。「国が保障しているから安全だ」と国民の頭を洗脳する。世界で国債がデフォルト(債務不履行)したニュースは、「あの国だからデフォルトした」と自国の国債の安全性の宣伝に使う。
強迫とは、間接脅迫方法を使い、国は銀行や生命保険会社、日本年金機構、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険に命じて国債を買わせるのである。
国の命令に一番従うのはその国の中央銀行だから、中央銀行に命じて大量に国債を買わせるのである。日銀が大量の国債を買っているのは、そのためだ。
【図表 日銀の国債保有残高】
アメリカの中央銀行も日銀に負けていない。2007年はわずかに750億ドル(1ドル=120円換算で9兆円)だったものが、2013年時点で1兆7000億ドル(204兆円)のアメリカ国債を保有する。
かくして、詐術と強迫に弱い国民が多い国ほど国債の国内消化率が高くなるという現象が起こる。世界の先進国では日本がその筆頭だ。
もし詐術と強迫を使わないとどうなるだろう。国は利回りの低い国債は売れないから国債の利回りが上がる。ローンの金利も上がるので住宅ローンの金利も上がる。アメリカの消費者はローンを組みにくくなる。その結果、以前より消費にお金を使わなくなり、国は税収を上げられなくなる。
グリーンスパンのFRB議長在任期間中に、アメリカは世界最大の債権国から世界最大の債務国へと転落した。その最大の原因は、アメリカ国債の大量の発行である。1966年、グリーンスパンはいみじくも次のように述べている。
「赤字国債を発行するということは、国家が国民からその富を収奪するのと同じである」