異常な好調は、「何かが間違っている」サイン
資産バブルを、政府が超低金利政策により、引き起こすと、じつは国家=政府が合法的に国民の財産を奪えるのである。
住宅価格が異常に高騰することで人々は、「自分の資産はどんどん膨らむから、今どんどんお金を使っても大丈夫」と思い、住宅、車、貴金属、家財道具をローンで買いまくる。そして株にも手を出す。政府にはたっぷりと消費税、印紙税、取引税が入ってくる。住宅価格が上がると、政府は固定資産税を引き上げる。そして消費者が死亡すると高騰した資産に大きな相続税をかけることができる。
財政的に苦しくなった政府は、どの国でも常に超低金利政策と大規模金融緩和政策をとり、資産バブル、株バブルを引き起こそうとするのは、国民の財産を政府が奪おうとする悪企みに政府が着手するからである。
2004年にアメリカのFRB議長であったアラン・グリーンスパンは、中央銀行の人間として当然ながら、「住宅のバイヤーは変動金利ローンをやめ、より伝統的な固定金利による長期融資に切り替えるべきだ」と指摘している。しかし、その指摘自体に反する傾向を推し進めたのは、ほかならぬグリーンスパン自身の低金利政策であった。不動産市場が、政府と通貨当局によって、経済を人為的に膨らませるツールとして使われたのである。
カリフォルニアでは、2004年の全ての住宅ローンの半分は、金利が2%しかなかった。これでは家の値段が上がるのは当然だろう。この安い融資を背景に、カリフォルニアの住宅価格は、2003年には17%、2004年には22%上昇した。2005年には、資産価格の上昇率は賃金上昇率の6倍にも達した。現在の東京株式市場の上昇はこれに類する。
このような異常な好調は、何かが間違っているという明確なサインである。グリーンスパンの18年にも及ぶ異常な低金利政策が、史上まれに見る負債まみれのアメリカ経済を作り出したのだった。そして、リーマン・ショックが襲ったのだ。黒田ノミクスのバズーカ砲も、史上まれに見る負債まみれの日本経済を作り出している。
日本という国では、世界のどの国でも見られない前代未聞の出来事が5つも同時に起きて、そのようなことはおそらく、今後地球上のどの国でも二度と起きないだろうという事実を認識しておく必要がある。
①巨額の財政支出
②2014年〜2015年のわずかな期間における異常な株価の高騰
③一世代に一度しかないであろう超低金利
④貧困層と高齢者の急拡大
⑤地方村落の消失拡大
50年以上ほぼ毎年、支出が税収を上回っている米国
国債とは、人々に気づかれずに人民の富を国家権力が略奪するうまいやり口だ。したがって、できる限り外国人に国債を買わせるのが賢いアメリカ大統領といえる。
我々は、アメリカの貸出金利が、なぜこんなにも非常に低い水準に、長期間据え置かれていたのかということを検証しなければならない。その過程で、アメリカ国債の機能も検証すべきだ。
アメリカで低金利が定着したのは、通貨を発行しすぎたためである。アメリカが1971年に金本位制から離脱するまでの35年間を見ると、その間に発行された通貨の量は2倍になっただけだったが、その後今日までの約45年間で、なんと40倍になっている。
どうしてそうなったのか?
それは、ローマ帝国時代の「パンとサーカス」の愚民政策とよく似ている。
今のアメリカにおいてはパンとサーカスの代わりが、超低金利政策と大量財政支出である。すなわち、政府の金が無節操にばらまかれるという通貨供給が行われているのである。
大量の米ドルが世界中にばらまかれ続けているが、その最大の原因を作ったのはアメリカ国債である。
ここでアメリカ国債の果たした役割を分析してみる必要がある。
国債は、税収よりも歳出が上回る場合に、その穴埋めをするために発行される。
以下の図のとおり1962年以来、ほとんど毎年アメリカの予算支出がアメリカの税収を上回っている。
要するにアメリカ政府の金遣いが荒いのである。
【図表 歳入と支出の総計】