AIIBを巡るアメリカの思惑と日本への牽制
正確な定義はないが、典型的なバブルとは、ものの価格が本来の価値とかけ離れて高くなってしまう現象を指す。
17世紀のオランダのチューリップ・バブルがその代表とされている。バブルの最中はよいが、いざそれが金融引締め局面に入って反転を始めると、一挙に経済が窒息状態になるので、金融緩和は一旦始めると、元に戻る出口はないのである。
借金で活況を呈している経済では、成長を維持するためには、さらなる借金を必要とする。それが止まれば経済が回らなくなってしまう。これこそが負債によって動かされる経済の弱点である。
おかげで現在の日本では、親の世代の罪が子供たちの世代に降りかかっている。親の負債が、子供の将来の経済に必要な資金の供給を断ち切ってしまったのだ。
日本の窮状は、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)に観察されていた。だからFRBは、日本が出口のない金融緩和から破綻してしまわないうちに金融引締めに入る決断をしたのだ。
アメリカほどずる賢い国はない。AIIB(アジアインフラ投資銀行)に日本を入れないために自分は入らないと発表する一方で、自分の代理人としてイギリスを入れさせ裏口入学したのだ。アメリカ政府やアメリカの銀行がイギリスのシティを通じてAIIBに資金を供給し、ノウハウも提供する。
シティには、アメリカの主要金融機関のほとんどが進出している。その見返りは、世界の金融秩序のアメリカ支配の継続だ。反対にアメリカは、中国が軍事施設をスプラトリー諸島(中国名・南沙)に建設するのを黙認することだ。つまり南シナ海と東シナ海の中国支配である。
アメリカにとっては好都合となる日本の官僚主義
もともとアメリカは、国民生活の消費がGDP(国内総生産)の76%を占めるという消費主体経済の国である。アメリカ政府としては、アメリカの経済成長を維持するために、アメリカ国民を消費へと駆り立てる必要がある。そのためには雇用を維持する必要があり、アメリカ国民の雇用の維持のためには他国、とくに言うことを聞いてくれる日本の犠牲によって、アメリカの産業を振興する必要があった。日本が、官僚主義の岩盤の重みで新しい産業を生み出せないことは、アメリカの好都合であった。
アベノミクスの第1と第2の矢は、官僚主義のシステムの隅々にお金を大量に注入するものであり、旧弊の維持に繋がるため、アメリカは大歓迎だった。これが、アメリカが黒田ノミクスを裏で日本に勧めた真の理由なのだ。日本はギリシャと違い外国から借金していないので、破綻しても外国(西洋)の貸主が困ることはない。第3の矢は、「もともと空砲にすぎない」とアメリカは見抜いていた。
しかし国家というのは、国民に保護を与えているように見せかける芝居の劇場チケットを、可能な限り高額で国民に買わせようとする強欲な興行主であるだけでなく、いざとなれば芝居が引けて劇場から出ようとする人々に、「身ぐるみ置いていけ」と刃物を突きつけることができる存在なのだ。