エネルギー価格の上昇は「製品価格」にも影響
3.「エネルギー要因」
最後に、「エネルギー要因」です。18世紀後半の産業革命以降、あらゆる産業は、動力源として石炭や石油といった化石エネルギーに強く依存するようになりました。これにともない、物価全体の動向を左右するのは、19世紀以降、「人口要因」から「エネルギー要因」にシフトしたといえます。
私たち生活者にとって、エネルギー価格の上昇は、ガソリンや灯油の値上がりといった直接的な影響にとどまらず、さまざまなモノの値上がりにつながるのが厄介な点です。
エネルギー価格が上昇すると、原材料価格が上がります。メーカーにとっては原価の上昇(利益の低下)を意味しますが、顧客や消費者をつなぎとめるため、はじめは企業努力で価格を維持しようとします。しかし、しだいに利益が圧迫され、価格に転嫁せざるを得なくなります。
こうして物価全体、すなわち消費者物価指数(CPI)の上昇が顕著になると、「モノの値段が上がっている」と生活者が実感するようになります。
インフレ率のピーク時には、エネルギー価格が上昇している
実際に、19世紀以降の英国・米国のインフレ率とエネルギー価格の動向についてみていきましょう。
英国と米国でずれが生じるものの、インフレ率のピークは、1810年前後、1864年前後、1918年前後、1949年前後、1980年前後です。インフレ率のピークから次のピークまでの期間は54年、54年、31年、31年と、数十年単位で循環を繰り返していることがわかります。
注目すべきは、「インフレ率のピーク時にはエネルギー価格が上昇している」という点です。これは、産業の動力源が石炭・木材から石油に変わっても共通してみられる事象です。

※上記は過去の情報であり、将来の動向を示唆・保証するものではありません。