2年金利も「5.5~6.0%程度」か
次に、2年金利を考えます。
[図表5]に示すとおり、2年金利は、過去の多くの利上げ局面において、「ターミナル・レート」近辺、もしくはそれよりも高い水準にまで上昇しています(→ただし、政策目標が「金利」ではなく、「マネーサプライの伸び率」に変更された、1979年10月から1982年10月を除く)。
したがって、「ターミナル・レート」を「5.5%から6.0%程度」と置くならば、2年金利もこれと同じ「5.5%から6.0%程度」と考えることができます。直近水準が4.86%(3月3日現在)ですから、2年金利には上昇の余地があります。
ここで、もしかしたら、上述した過去の政策金利と2年金利の関係から、「2年金利はターミナル・レートを超えてもっと上がっても不思議ではないのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、その可能性はゼロではありません。
しかし、FRBのパウエル議長はおそらく、①利上げ打ち止めを見込む政策会合の直前で「いったん打ち止め」のシグナルを出す、もしくは、②利上げ打ち止めについて話し合った政策会合後の声明文や記者会見で「いったん打ち止め」を表明する、あるいは少なくとも、③「そろそろ打ち止めが近い」と表明する、はずです。
これが正しいなら、2年金利はせいぜい「ターミナル・レート」付近までしか上がらないと考えられます。
10年金利…2年金利マイナス1%で「4.5~5.0%程度」
利上げの終盤戦で10年金利の水準を考えるうえでは、「2年~10年金利差」が役立ちます。
「2年~10年金利差」は、将来の利下げや景気後退を織り込むほど、マイナス幅が大きくなります。前節で見たように、2年金利は「利上げ打ち止め」までは下がらず、政策金利の水準で「釘付け」にされます。その一方で、10年金利は利上げが進んで2年金利が上がれば上がるほど景気後退をより織り込んで低下していきます。
ただし、[図表7]に示すとおり、過去を見ると、「2年~10年金利差」は、最大で「マイナス1%」程度です(→政策目標が「金利」ではなく、「マネーサプライの伸び率」に変更された、1979年10月から1982年10月を除く)。
ここから、2年金利を「5.5%から6.0%程度」と置くならば、10年金利の「下限」は、そこから1%を引いた「4.5%から5.0%程度」あたりと導けます。
確認ですが、「2年~10年金利差」は、「最大でマイナス1%」程度であるため、10年金利の「4.5%から5.0%程度」は、10年金利にとっての(「上限」ではなく)「下限」です。直近水準が3.97%(3月3日現在)ですから、10年金利には上昇の余地があります。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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