それでもルール違反をする場合には…
これらを整えたうえでそれでもルールを守れない社員がいるとき、どうすればよいでしょうか。そういう社員がいる場合には、その人に守らせようと思うことはいったん諦めましょう。怒鳴りつけたり、ましてや首根っこをつかまえたりするようなことは絶対に許されません。守れていない状態を強制的に修正することはできないのです。
守らない人がいることを逆に組織の成熟化のために活用する方向で考えましょう。ルールがあることや、その遵守状況をよくしていくことがなぜ重要なのか、はなにも伝えずにいると忘れられてしまいがちです。また、日々メンバーが増えたり入れ替わったりしていく企業において、風化させずに常に全員に共通の認識を持たせ続けることは多大な根気と努力が要ります。
ですから、ここで先のような社員を活用します。継続的に違反を犯して「くれる」社員を、「違反をするたびに全社に対しアラートを鳴らすきっかけをくれる人」と見るのです。そのような社員が違反をしてくれた日に、たとえば全社に対して、
こうした、なぜルールが必要で、全員で守ることにどのような意味があるかを周知する連絡をしましょう。こうすれば、違反が発生するたび、全員にそのことを改めて伝えることができます。違反者を糾弾することが目的の連絡ではありませんので、誰が違反を犯したかを文書に入れる必要はありません。
これを続けていくと、組織内でルールに対する認識の基準が上がっていきます。どんどん組織が成熟していくのです。そのとき、違反をしていた社員はどうなっているでしょうか。組織のなかでルールを守ることに対する意識が高くなると、違反者に対する視線も厳しいものになってきます。会社が主導しなくても組織に自浄作用が生まれてくるのです。
そうなってくると違反をしていた人は選択を迫られます。「組織に合わせる」か「去る」かです。合わせにきたという状況はルールを守るようになるということですので、それが最善です。ただ、去るという選択をしてしまったとしても、その人が去ったあとの組織は前述したように皆が帰属意識を持った組織に生まれ変わっていますので、また同じような人は生まれにくくなっています。
今日、明日で解決できる方法ではなく申し訳ないのですが、そのように解決をはかっていきましょう。
1番しようとしてはいけないことは、この対象者にルールの大切さを伝え考え方を変えさせようとするアプローチです。人の考え方そのものをいきなり変えることは容易にできません。ところが、そういう影響を部下に与えることができない管理者に対して、「部下にルールを守らせることもできないあいつは、管理者として失格だ」と考えてしまいがちです。
しかし、そうではありません。ルール違反者がいることに悩んでいる状況は、ルールの順守を求めているという点で、正しい組織運営に向かっているといえます。
有手 啓太
株式会社識学
西日本営業部 部長/上席コンサルタント
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