(※写真はイメージです/PIXTA)

コスト高やセキュリティ面の課題を理由に、病院内の連絡手段として医療従事者がいまだにPHSを利用しているケースが多くみられます。課題が多くても病院はPHSからスマホへ移行すべきと、エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社上席執行役員CSO兼CMOの小西竜太氏はいいます。一体なぜなのでしょうか? 日本における医療機関のDXの現状とともに詳しくみていきましょう。

診療系はシステム化が進むも…組織全体では発展途上

【図表2】診療系に偏重している病院システム出所:医療機関向けIT・デジタルサービスの比較・検索サイト「コトセラ」

 

医療機関の経営層は医師や看護師など医療職に偏在していることもあり、診療系システムのほうを進化させていくことを優先してしまう傾向にあります。そのことを表したのが図表2になります。

 

診療系システムのなかでは、一般にPACSがある放射線部門でのシステム化がもっとも早く、それから電子カルテ・医事会計、検査部門・薬剤部門のシステム化へと進展していくのが一般的でしょう。

 

一方で、たとえば事務系システム(総務・人事・会計・契約)はパッケージ型ソフトウェアやWord・Excel管理が主であり、SaaS導入まで至っておりません。さらに職員向けシステム、患者向けシステムなどは皆無といった医療機関もあります。

 

こうした医療職が直接かかわらない非診療系領域は、システム化・導入が進まずに、ますます診療系と乖離していくという構図があります。「医療情報部」といった部署にしてもOA機器やLANなどの保守作業に追われ、組織全体の戦略を思い描けないといった状況にある場合が多いようです。そこで筆者が医療機関において目指すべきだと考えているイメージが図表3です。

 

【図表3】病院DXは組織全体でのデジタル化の先出所:医療機関向けIT・デジタルサービスの比較・検索サイト「コトセラ」

 

病院DXにおいては、単純なシステム整備だけではなく、病院職員が正しいIT・セキュリティリテラシーを持ち、デジタル技術を用いた課題解決を図れるような環境を構築することも重要です。

 

よって診療に加えて、非診療業務や職員間コミュニケーションもデジタル技術を積極的に導入するべきですし、患者とのタッチポイントも進化する必要があります。病院におけるDX投資は、非診療系の部門にも目を向けて、バランスのとれたDX投資を意識するのが肝要と考えます。

 

診療系に導入するツール類は高額になりがちですが、非診療系であれば、一般企業でも使用されるSaaSやその他のデジタルソリューションを用いることも可能です。そのため、診療系に比べてかなり低コストの投資であっても高い導入効果が得られるのではないでしょうか。

 

また最近、ランサムウェアによる被害などセキュリティ面でのリスクが懸念されています。今後、クラウドサービスやSaaSを導入していくなかで、ネットワークやセキュリティなどインフラ機能も高める必要があるでしょう。

 

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