面接担当者の「自己開示」で、相手も心を開く
■候補者に信頼される面接担当者とは?
入社の意思決定をしてもらうには、まず候補者の心にある思いを知らなくてはなりません。ただ、人はそう簡単に、心の奥底にある心理的事実を明らかにしません。大事にしている価値観について、他人から否定されることを恐れるからです。どのようにすれば心を開いてくれるでしょうか。
一つは、面接担当者自身が候補者に「自己開示」することです。自分が心を閉ざしているのに、相手にだけ本心を打ち明けてもらうのは無茶な要求です。まず自分の心にある価値観、それが形成されたきっかけや出来事、その価値観につながる現在の行動を伝えることで、相手に「この人なら話してもいいかも」と思ってもらうのです。
深い話を聞きたければ、自分が深い話をしなくてはなりません。その際、できれば共感してもらいやすいように、自分と候補者の共通点を意識するとよいでしょう。人は、共通点のある人に好感を持ちます(「類似性効果」)。そこで、若手だった頃のことを思い出し、雑談がてら共感してもらえそうな話をするのです。相手の立場だったときに抱えていた不安などを思い出しながら話すことが、候補者の自己開示につながります。
もう一つ大切なことは、「損得勘定なしに、フラットに相談に乗る」ことです。人は打算的なものを感じると、身構えて批判的に話を聞きがちです。不自然に口説こうとしていると候補者が感じれば警戒されます。どんなによいことを言われても、話を作っている、盛っていると思われてしまいます。
そのため、候補者を強引に口説き落とそうとするのは、多くの場合で逆効果です。あくまでも候補者第一に、フラットな雰囲気での面接が重要です。逆に言えば、フラットに本音の相談ができるまでの人間関係を構築する必要があります。
現在、採用活動界隈の一部において、「御社が第一志望」と嘘をつく候補者と、よいことばかりをアピールする企業との間に、「不信感のスパイラル」と揶揄されるほどの疑心暗鬼が生じています。
こうした状況において腹を割ってコミュニケーションするには、まずは採用側が誠意をもって歩み寄り、候補者に心を開いてもらう必要があります。こうした努力によって、はじめて率直な、本心からの対話が可能になるのです。
•まずは自分から「自己開示」する。
•損得勘定なしに、フラットに相談に乗る。
曽和 利光
株式会社人材研究所 代表取締役社長