6.為替
<現状>
円相場は対米ドルで大幅に下落しました。堅調な米雇用統計をはじめ市場予想を上回る米経済指標の発表が相次ぎ、米長期金利が大きく上昇したことから、日米金利差の拡大を意識した円売りが加速しました。植田次期日銀総裁候補が大規模な金融緩和策を続ける考えを示したことも円の弱材料となりました。先月末130円近辺だった円の対米ドルレートは、月末136円台で終了しました。欧州の長期金利も大きく上昇したため、円は対ユーロレートでも下落し、1ユーロ=144円台で終了しました。一方、円の対豪ドルレートは1豪ドル=91円台で概ね横ばいでした。失業率の悪化などから豪ドルが対米ドルで下落したことが背景です。
<見通し>
円の対米ドルレートは、レンジを切り上げつつ緩やかに上昇する展開を予想します。FRBの利上げは当面継続するものの、先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止と日銀の金融引き締めが意識され、米ドルが弱含む展開を予想しています。円の対ユーロレートは、レンジ内のもみ合いを予想します。ECBのタカ派姿勢がユーロのサポート要因となる一方、日銀の政策修正も意識されるためです。また、円の対豪ドルレートも、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。
7.リート
<現状>
グローバルリート市場(米ドルベース)は下落しました。米国のリート市場は、堅調な米経済指標の発表が相次ぎ、FRBの利上げ停止が遠のいたとの観測から米長期金利が大きく上昇したことを嫌気して下落しました。一方、株価の上昇を好感して欧州のリート市場は上昇しました。日本のリート市場は、植田次期日銀総裁候補が金融緩和政策を継続する考えを示したことを受けて反発しました。S&Pグローバルリート指数(米ドルベース)のリターンは前月末比▲4.6%となりました。一方、為替効果はプラスに寄与し、円ベースのリターンは同▲0.1%となりました。
<見通し>
米国リート市場は、FRBの利上げ長期化観測と先行きの景気後退が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられます。FRBのタカ派姿勢が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる引き締め強化から上値の重い展開を想定します。ただし、中長期では財政支出による景気回復とともに持ち直すとみています。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。