(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資は空前のブームになっています。しかし、収益を上げられる可能性がある一方で、思わぬトラブルが発生するリスクもそこかしこに潜んでいます。本記事では、みずからも不動産投資家であり、不動産取引に関する法律実務に精通した弁護士・山村暢彦氏が、著書「失敗しない不動産投資の法律知識」(中央経済社)より、起こりうる不動産トラブルの内容とその対策についてわかりやすく解説します。

「契約不適合責任トラブル」の実際例

不動産売買においては、売主が「契約不適合責任」を問われることがあります。契約不適合責任とは、売買契約の当事者間で、あらかじめ目的物の品質・性能等に関する条件の取り決めをしておき、目的物がその条件をみたしていなかった場合に、売主が問われる法的責任のことです。

 

大小ありますが、契約不適合責任トラブルは多々発生しています。

 

小さいものでは、建物を解体したところ、瓦礫が地中から出てきて、数十万円の撤去費用が発生したというもの、大きなものでは、建物から漏水が発覚したとか、建物解体後地中から大きなコンクリート片が発見されて、土地や建物の購入価格と同額程度の修繕費用や解体費用、撤去費用が発生した、などです。

買主側が法的責任を追及する場合の負担

このような契約不適合責任を追及できる場面が生じた場合、法的手続のコスト負担が非常にネックになってきます。

 

たとえば、5,000万円のアパートを購入したところ、後に漏水が発覚し、工事費用および工事中の家賃補償等で合計1,000万円の損害賠償が生じたという例で考えてみましょう。

 

現行の裁判制度では、法的な請求を行う側の手続コストの負担が非常に大きくなります。今回の事例でみていきますと、まずは仲介会社を通じて売主に修繕費等の負担を要求することになるでしょう。

 

そこで、売主が任意に損害賠償額を負担してくれれば話は簡単です。ですが、一般的に数十万円ならまだしも、数百万円の支出になってくると、理由を付けて減額、または応じてくれないのが実情です。

 

損害額が1,000万円を超えてくると、よほどのことがないと裁判手続までやらないと解決しないことが多い印象です。

 

さて、このように損害賠償請求をしたとしても、売主に突っぱねられてしまった場合、買主としては、裁判を起こすほかありません。

 

もっとも、このような場合、漏水が発生したことおよびその原因等は、建築士の診断を受けて意見書を作成してもらう必要があります。

 

瑕疵が、比較的容易に立証できるものならよいのですが、漏水ともなると建築士の協力が必要になります。まずはそのために建築士の先生への依頼費用が必要になってきます。もちろん、物件の大きさや診断内容等によって費用は変わってくるのですが、経験的には少なくとも50万円前後はかかることが多いです。

 

次に裁判ともなると、弁護士費用が発生します。弁護士費用も現在は自由設定になっているのですが、弁護士会で過去に用いていた算定基準を用いて、事案ごとに金額が増減するような事務所が多いと思います。

 

そのため、対象物件等の利益額によって大幅に変わってきますが、やはり裁判ともなると、100万円以上の費用が発生することが多々あります。

 

弁護士目線での言い訳に聞こえるかもしれませんが、裁判は短くても1年前後はかかることが多く、その間に毎月1回の出廷およびその都度法的書面作成等を行っていくことを考えると、やはり100万円以上の費用がかかることが多いです(裁判を提起するだけで数百万円の費用が発生してしまいます)。

 

さらに厳しいことに、請求する側は、簡単に100%勝てるわけではないという事情もあります。

次ページ手続きコストの観点からみた裁判の可否

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失敗しない不動産投資の法律知識

失敗しない不動産投資の法律知識

山村 暢彦

中央経済社

不動産投資を始めようとしている方、不動産投資の経験のある方、次世代に賃貸不動産を遺したい方。人に貸すための不動産購入で失敗しないための法律知識がわかる本。

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