(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資は空前のブームになっています。しかし、収益を上げられる可能性がある一方で、思わぬトラブルが発生するリスクもそこかしこに潜んでいます。本記事では、みずからも不動産投資家であり、不動産取引に関する法律実務に精通した弁護士・山村暢彦氏が、著書「失敗しない不動産投資の法律知識」(中央経済社)より、起こりうる不動産トラブルの内容とその対策についてわかりやすく解説します。

手続きコストの観点からみた裁判の可否

裁判というのは、思うほど便利な制度ではなく、勝訴した場合に勝訴した金額を自動で振り込んでくれるわけでもなく、相手が納得して支払わなければ強制執行手続という別途の裁判手続を行う必要が生じます。

 

また、強制執行手続のためには、別途弁護士費用が発生しますし、そもそも相手の財産を調べるのも請求する側の責任になるため、相手方が不動産等を保有していなければ、財産を差し押さえられず、絵に描いた餅ならぬ、判決文に書かれた餅になってしまい、裁判に勝っても相手方の財産から回収できない、ということもあり得ます。

 

そうすると、完全勝訴できる場合であっても、執行不能リスク等を考えて、本来請求できる額の8割前後くらいの金額で和解するというのは、よくある話なのです。

 

ここまで読んでいただいた方には、手続コストまで考えると事実上、契約不適合責任を追及することは難しいんじゃないの? という点をご理解いただけたかと思います。

 

このような背景事情があるため、実務的には数百万円程度の損害額であれば、とにかく早期に相手方と交渉して一部でも負担してもらい、落としどころを探っていくほかないということが言えるかもしれません。

 

また、別角度からの負担として、法的手続には時間がかかるという点も挙げられます。

 

実際に、瑕疵がある不動産をつかんでしまった不動産会社や投資家の方でも、腰を据えて勝てるかどうかわからない裁判に賭けるというよりは、損失が出るのを承知で転売するという選択肢をとることも少なくないでしょう。

 

私が実際に受けたご相談でも、勝訴可能性が低いと判断して、そもそも訴訟提起せずに、損失が出るのを承知で業者へと売却し解決を図った事案がありました。

 

他方で、勝てる見込みは高いが、売主が一個人で、売却代金をどこかに隠してしまっており、勝ったとしても回収できない可能性が高いため、結局、第三者に転売して解決を図ったというものもありました。

 

弁護士がいうと元も子もないのですが、「法的に正しいこと」を正しいと証明するための時間やコストが発生してしまうことから、世の中、「正しい」ように物事が進まないということも事実としてあるのです。

次ページではどうする? 具体的な不動産売買のリスクヘッジを考える

本メディア並びに本メディアの記事は、投資を促すもの、あるいは特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、株式会社幻冬舎ゴールドオンライン、幻冬舎グループは、本メディアの情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

失敗しない不動産投資の法律知識

失敗しない不動産投資の法律知識

山村 暢彦

中央経済社

不動産投資を始めようとしている方、不動産投資の経験のある方、次世代に賃貸不動産を遺したい方。人に貸すための不動産購入で失敗しないための法律知識がわかる本。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧