(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資は、収益を上げられる可能性がある一方で、トラブルが発生するリスクもあります。たとえば、相続対策と残された家族のためを思ってアパートを建てたら、泥沼の相続争いを招くこともあります。本記事では、不動産取引に関する法律実務に精通し、自身も不動産投資家である弁護士・山村暢彦氏が、著書『失敗しない不動産投資の法律知識』(中央経済社)より、相続を見据えた不動産投資のリスクについて解説します。

相続税対策としての不動産投資で見落とされているリスクとコスト

「相続」の手続はなかなか教科書どおりに進まないものです。

 

「アパートの収益があれば、残された子どもたちの生活にも役立つだろう」「土地を遊ばせておいても税金がかかるだけだし、アパート経営をやってみよう」このような気持ちでアパート経営を始めることは、良いこともあるのですが、逆に収益を上げるアパートがあると、そのためにより複雑な相続手続が必要になり、親族間の紛争に発展してしまうこともとても多いです。

「共有」状態を解消するおカネがない!

相続人が複数いる場合、日本の法律では、遺言書による事前の相続対策をしていなければ、相続財産となる不動産は、基本的に相続人の「共有」状態となります。

 

たとえば、お父さんが亡くなり、お母さんと子ども2人が残されるケースですと、法定相続割合は、お母さんが2分の1、子どもが4分の1ずつ、ということになります。

 

そうすると、アパートが3棟あった場合、どのアパートが誰のものかというのは、法律では決めてくれず、アパート3棟の権利を、お母さんが2分の1、子どもが4分の1ずつ「共有」している、という状態になります。

 

そして、この共有状態を解消するためには、遺産分割協議と呼ばれる相続人の話し合いによって、誰がどのアパートを取得するかを決めていかねばなりません。

 

もっと具体的に見てみましょう。現金が2,000万円、実家の土地と建物が3,000万円、1棟5,000万円のアパートが3棟あったとします。

 

この場合相続財産は、

 

総額2億円(=2,000万円+3,000万円+5,000万円×3)

 

となります。割合どおりに相続分を計算すると、母が1億円分、長男が5,000万円分、次男も5,000万円分を相続するルールになっています。

 

そのうえで、

 

・お母さんは高齢でアパートの運営維持も大変だから、預貯金をいくらか相続してアパートは受け取りたくない。
・実家は思い出もあるので、お母さんは今後も住み続けたい。
・長男は実家近くに住んでいてアパートの運営もやりやすいが、次男は遠く離れた場所に住んでいるので、アパートを受け継ぐよりは現金で相続財産を受け取りたい。

 

このような希望があるとしましょう。そして、仮に長男がアパート3棟を受け取ろうとするとどうなるでしょうか?

 

現金と実家の土地と建物は、合計で5,000万円分です。母は1億円の相続分がありますから、これでは、5,000万円分足りません。

 

一方、アパート3棟は1億5,000万円相当なので、5,000万円の相続分しかない長男がアパート3棟を相続すると、1億円分余計に相続することになります。

 

そうすると、長男が、余分に相続した分の「代償金」として、母親に5,000万円、次男に5,000万円渡さないといけない、という整理の仕方になってきます。

 

しかし、1億円の現金はなかなか用意できず、法律どおりに分けることが難しくて揉めることになる、というわけです(こうしたケースはとても多いです)。

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失敗しない不動産投資の法律知識

失敗しない不動産投資の法律知識

山村 暢彦

中央経済社

不動産投資を始めようとしている方、不動産投資の経験のある方、次世代に賃貸不動産を遺したい方。人に貸すための不動産購入で失敗しないための法律知識がわかる本。

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