不動産の共有持分を放棄するとどうなるのか?
共有持分の放棄も共有者単独で自由に行え、放棄された持分は他の共有者に移ります。
放棄された共有持分の帰属について
放棄された持分は共有者が2人だけの場合、共有者の1人が放棄すると、持分全てが他の共有者へ移ります。しかし、共有者が多いと持分の帰属する割合はやや複雑となります。例をあげて計算してみましょう。
(例)8,000万円の不動産を甲・乙・丙3人で共有していた場合
・甲:共有持分割合4分の2(4,000万円)
・乙:共有持分割合4分の1(2,000万円)
・丙:共有持分割合4分の1(2,000万円)
乙が持分を放棄すれば、甲と丙が持分割合に従い4分の1を按分します。
甲:4分の1×3分の2=12分の2(共有持分割合は元の4分の2と合算して、3分の2)
丙:4分の1×3分の1=12分の1(共有持分割合は元の4分の1と合算して、3分の1)
共有持分を放棄する手順について
共有持分の放棄は共有者が単独で可能です。ただし、登記手続きは他の共有者と協力して手続きを進めます。
1.共有持分の放棄を決める(放棄前にその意思を他の共有者へ伝えておく方が良い)
2.持分を放棄する共有者・他の共有者がそれぞれ必要書類を準備
3.共有不動産の所在地を管轄する法務局で、持分全部移転登記を申請
4.登記完了後、新たに発行された登記識別情報通知・登記完了証等を受領、同時に移転不動産登記簿謄本を取得
持分を放棄する共有者・持分を取得する共有者双方が、次の必要書類を準備します。
(1)持分を放棄する共有者
・登記申請書:法務局で取得
・登記済権利証または登記識別情報
・印鑑登録証明書:市区町村役場で3か月以内に発行された書類を取得
・固定資産税評価証明書:市区町村役場で取得
・実印
・本人確認書類:運転免許証、パスポート等
(2)持分を取得する共有者
・現在の住所が載っている住民票:市区町村役場で取得
・認印
・本人確認書類:運転免許証、パスポート等
その他、登録免許税(固定資産税評価額の2%)を納付します。
共有持分にする際の注意点
不動産を共有したままにしていると、共有者1人が亡くなった後、複数の相続人が共有者となる場合があります。相続による不動産の共有者が増えてしまうと、権利関係が複雑となり、誰と誰が共有している不動産なのかわからなくなるおそれもあります。
共有不動産をどのように管理または処分するか、なるべく早い段階で決めておかないと、子や孫の代で所有権に関するトラブルの発生が懸念されます。
共有者間や相続人間で紛争となる不安があれば、共有不動産をどのように管理・処分するか、弁護士や司法書士のような法律の専門家に相談した方が良いでしょう。専門家の視点から有益なアドバイスが期待できます。