知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは、寒すぎる日本の家を暖かく改修する方法。実はいまが改修の大チャンスだといいます。みていきましょう。
お勧めは「内窓設置」か「外窓交換(カバー工法)」
4つの工事種類のうち、ガラス交換は手軽ではありますが、アルミサッシの多い我が国状況を踏まえるとアルミのフレームに生じる結露を止めることはできないのであまり勧めできません。
結露が生じると、どうしてもそこにカビが発生し、さらにそのカビが餌になり、ダニも発生します(関連記事:『日本の住宅「最高等級の窓」でも「海外では最低基準」という衝撃の事実』)。そして、それらがアレルゲンとなって、喘息やアトピー等を引き起こすことも多いようです。欧州では「建築物理学」という学問の中で「結露を引き起こすのは誤った設計であり、人の健康を害する瑕疵である」いう考え方があるほどで、多くの欧州の国々では結露は起きてはならないものです。日本では、断熱性能が不十分なアルミサッシもしくはアルミ樹脂複合サッシが主流を占めているため、結露が生じるのは当たり前と思っている方が多いようです。ですが、断熱・気密性能をきちんと確保していれば結露は起きなくなります。
そうした視点で考えると、コストパフォーマンスが高く、効果も大きいのは内窓設置です。既存の窓の内側のスペースに新たに内窓を設置する方法です。この方法は、1窓あたりの施工時間も約60分程度と簡便で費用もかなり手頃です。その上、既存の窓と新たに設置する内窓とで高い断熱性能を確保することができます。樹脂のLOW-Eガラスの内窓を選べば、窓に結露はほとんど起こらなくなる(既存の外側窓には結露が少し生じる可能性あり)と思います。
ただし「身代わり結露」とも呼ばれているのですが、結露は厄介なもので、窓の結露が減った水蒸気はどこか違う場所で結露を誘発する可能性があります。そのため、住まい方や換気方法などプロに併せて相談することをお勧めします。
なお、内窓設置の場合は、窓を開けるためには、2枚の窓を開けなければならないのが難点ではあります。
窓は、1回の開け閉めにしたいという方には、外窓交換(カバー工法)がお勧めです。サッシは壁の中に取り付けられているので、本来は壁を壊さないと交換できないのですが、この工法は、【図表3】のように、壁の中に入っている既存の枠を残して、内側を撤去して、少し小さい窓を既存枠の内側に設置するものです。窓のサイズが少し小さくなってしまうのが欠点ではありますが、壁を壊してのサッシの交換に比べて、工事が簡単で、費用もだいぶ安くなっています。施工時間も、1窓あたり約2時間~半日とかなり短時間での施工が可能です。
外窓交換(はつり工法)は、壁の一部を壊して同じサイズの窓を高性能にするものです。この工法は、床・壁・天井の断熱リノベや耐震補強とセットで行う断熱フルリノベの際に採用するのが現実的かと思います。
それぞれの工法の補助額は、【図表4、図表5】のとおりです。先ほど触れたように、窓のサイズとリノベの方法(改修後の断熱性能)によって補助額が決まる定額補助になっています。
住まいるサポート株式会社 代表取締役
一般社団法人日本エネルギーパス協会 広報室長
神奈川県出身。東京大学修士課程(木造建築コース)修了、同大博士課程在学中。千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に「結露のない健康・快適な住まいづくり」のサポートを行っている住まいるサポート株式会社を起業。日本でトップクラスの性能を誇る工務店・ハウスメーカーを厳選して提携し、消費者に無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」や、デザインと高性能を両立する設計を行う建築家のマッチングサービス等を提供。また、横浜市住宅政策課主催のセミナーや毎日新聞社主催のセミナー等、多数のセミナーに登壇、メディアへの出演など、高性能な住まいづくりに関する情報発信に積極的に取り組んでいる。住まいづくりを考えている方々への情報発信を通して、ひとりでも多くの方が、住宅の性能に関する基礎知識を持ち、他の先進国並みに「結露のない健康・快適な家」を普及させることを目標としている。主な著書に、「元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家」(クローバー出版)、「人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい: 建築家と創る高気密・高断熱住宅」(ゴマブックス)など。
●高性能な住まいの相談室:https://sml-support.com/lp
●建築家と創る高気密・高断熱住宅:https://sml-support.com/archicon
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