完全自動化を導入するも…現場からは不評
RPAの導入は、承認から2カ月で実現した。内心、意外と掛かるものだなと思ったが、要件定義と実装を担うだけではなく、DXチームは現場のヒアリングなども並行して行っている。リードタイムが長くなるのは仕方がない。これを機にアイデアが形になっていけば、継続的、連続的に効果が現れるだろうと期待した。
しかし、その期待は見事に裏切られることになる。実装してすぐに、RPAの使い勝手が悪いという声が上がり、使われなくなったのだ。
RPAによって入力作業の総数は減った。これは狙いどおりの効果だ。しかし、読み込みの精度がいまいちで、うまく入力されないことがあったり、違う欄に違う情報が入力されることがあったりして、その都度、エラーが出てやり直しになる。その手間が掛かってしまい、期待したような工数削減にはならなかった。
また、エラーが出ることにストレスを感じた社員は従来のように自分でエクセルに入力するようになり、やがて使われなくなっていった。精度が上がらない原因はどこにあるのか。
RPAはPC上で行う業務を自動化するロボットだ。PC画面上の座標軸、画像認識やウェブページの構造から位置を特定しマウスやキーボードで行う動作をロボットに認識させることで、作業を定型化する。順番どおりに書類を確認し、抜けている項目があれば別の書類から情報をコピーして埋め、どう埋めればよいか判断できない場合はエラー通知を出す。
要するに、最初の設定を正確に、細かく行うことで自動化できるが、設定がまずければあらゆる項目でエラーが出る。その都度、人の目と手による確認と修正の作業が必要となってしまう。
ここでの問題は入力フォーム、情報を拾ってくるフォームがきれいにパターン化されていないことが要因であり、それを解決するとなると膨大な時間を要する設定が必要であった。その膨大な時間を想定するのにも工数が掛かってしまい、結果的にこの案件はうまくいかなかった。
ただ、発見はあった。DXに取り組み始めたばかりの会社はデータがきれいにそろっていないことが多い。そのような場合は機能を充実させて業務の完全自動化を狙うよりも、ある程度までは人の手を使うことを前提として、その作業を手伝う機能を開発するほうが効果が大きくなるケースもある。
これは新しい視点だった。僕たちはこれまで人が担っている業務を一から十まで自動化しようと考えていた。DXという言葉のイメージから、つい完全自動化を目指してしまうのもDXの過程でよく起きることの一つだ。
しかし、完全自動化という言葉に踊らされてはいけない。完全自動化ができる場合もあるが、人が主体となって業務を担いつつ、アプリケーションなどによって部分的に業務をサポートすることもDXのアプローチの一つだ。
重要なのは機能を高めることによって得られる効果を最大限にすることだ。最終的に生産性と競争力の向上に結びつくのであれば、完全自動化でも部分的な自動化でもどちらでも構わない。
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