(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者であれば、いずれ考えなければならない「後継者問題」。日本では後継者不足による倒産が相次ぎ、なかには「事業承継の失敗」でトラブルになった結果、倒産にまで至ってしまった企業も少なくありません。本記事では、相続に詳しい税理士兼公認会計士の小形剛央氏が、あるリフォーム会社の事例とともに「承継準備不足」が引き起こす悲劇をみていきます。

「残念な事業承継」が起こるワケ

「事業承継をするなら絶対に成功させたい」とは、経営者であれば誰もが考えることですが、現実には事業承継で思わぬ失敗をしてしまう例は決して少なくありません。具体的には、次のようなケースが散見されます。

 

・承継後すぐに従業員や取引先が離れてしまい、廃業に追い込まれる
・後継者候補が会社に愛想を尽かし、退社してしまう
・オーナーが急死して、遺産をめぐり〝争続〟が起きる
・M&Aによる事業承継を進めていたが、売却前に悪評によって話が流れる
・そもそも後継者が見つからない

 

こうした残念な事態が起こる要因はさまざま考えられますが、その大半が、経営者もしくは後継者による準備不足にあると私は考えています。

 

事業承継における準備というのはおおむね決まっています。企業の状態や業種によって取り組むべき期間や内容に違いはありますが、基本の戦略は変わりません。にもかかわらず、なぜ準備不足という事態が起こるのか。そして、準備不足のまま事業承継をしてしまったら、どんな失敗が起こり得るのか――。

 

準備不足に問題があるということは、逆にいえば、十分な準備をしておけば事業承継は成功しやすくなるということです。あるいは、承継後になんとかしようと思っても、どうにもならないことが多いともいえるでしょう。

 

事業承継は、ヒト・モノ・カネ・情報の経営資源がすべて関わる大きなイベントです。その過程でこれらの資源を失ってしまったら、容易に取り戻せるものではありません。たとえ取り戻せたとしても、多大な時間を要することは必至です。

 

「社員や取引先が変わるわけじゃないから、大丈夫だろう」
「うちの家族は、お金のことでモメたりしないだろう」
「事業承継税制を利用したいから、とにかく早く承継しよう」

 

私がお会いした経営者のみなさんのなかには、このように考える方も多く見られますが、こんな考え方がトラブルの元凶となるのです。もしも本記事をお読みのみなさんに心当たりがあれば、この機会にそうした考えを捨てていただければと思います。

 

それでは、準備不足によってどのような失敗が起きるのか。具体的な事例とともに解説していきましょう。

 

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次ページ「残念な事業承継」の“あるあるパターン”

※本連載は、小形剛央氏の著書『いきなり事業承継成功読本』(日刊現代、講談社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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