株価底打ちは、利下げ開始後「しばらくして」から
さらにタイミングを細かく見ていくと、日次データが取れる1964年以降、S&P500は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始後「しばらくしてから」、大底をつける傾向にあります。
利下げ開始後「しばらくしてから」というのがポイントで、多くのケースにおいて、利下げ開始「直後」は、株価がまだ下がり続けることが多いように見えます。
その背景を想像するなら、利下げ開始「直後」は、FRBも株式市場も、たとえば、解雇の増加や金融危機など、「怖いことが起きている」ことを肌に感じて(たとえ、それまでにかなりの株価調整が進んでいても)「当座は、誰も進んで買わない状況」であるためでしょう。
株価のピークからボトムまでの期間は「2年程度」
ただし、[図表4]をよく見ると、1982年、2003年、2009年のように「利下げ開始から株価底打ちまで」が、「1年を超えて2年近くに及ぶ」こともあります。せっかく利下げが始まっても、「利下げ開始後しばらくしてから」という期間が「2年間」だとすると、結構長く感じます。
そこで考えるべきは、「過去は、株価の調整期間がどのくらい続いているか」でしょう。
昨年6月の分析を応用すると、1871年以降の景気後退時における株価のピークからボトムまでの期間は平均16.7ヵ月と計算されました。すなわち、過去の多くの弱気相場の継続期間を平均すると、「16.7ヵ月」程度だったということです。
実際、[図表5]にも示すとおり、1964年以降のチャートを眺めても、株価のピークからボトムまでの期間はせいぜい「2年程度」です。たとえば、ITバブルの崩壊時でも、S&P 500で見れば、株価の調整期間は2年1ヵ月でした。
そして、今回のピークは、日次ベースで2022年1月(月中平均では2021年12月)でしたから、もうすでに「1年以上」のあいだ、弱気相場は継続しています。
まとめると、仮に、①今年の10~11月頃に景気後退に行き、②米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを始めれば、その数ヵ月後あたりに株価は大底を打つというのが、過去の景気後退時における「株価の動き」と「調整の継続期間」のデータと整合性があります。
この見通しが乗り越えるべきハードルは、
1.景気後退に行く
2.速やかに利下げが始められるように、それまでにインフレ率が鈍化している
ということでしょう。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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