大家愕然。店舗を貸していた“家族経営のラーメン屋”→従業員が全員知らない人に…「賃貸契約の解除」は可能か【弁護士が解説】

大家愕然。店舗を貸していた“家族経営のラーメン屋”→従業員が全員知らない人に…「賃貸契約の解除」は可能か【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

家族でラーメン・中華料理店を営む同族会社にビルの店舗を貸してた大家。数年後、貸していた会社の全株式が大手飲食チェーンを営む株式会社に譲渡されており、代表者や店長・従業員がすべて変わっていることに気がつきました。この場合、大家は「賃借権の無断譲渡」を理由に契約解除することができるのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、過去の判例をもとに解説します。

大幅に経営陣が変更に…賃借権の無断譲渡といえる?

ビルオーナーからの質問

私は所有するビルの店舗1室を、ラーメン・中華料理店を営む株式会社に貸していました。この株式会社の代表者とは、賃貸借契約締結時に会いましたが、家族で経営する同族会社のようでした。

 

契約してから2年ほど経ったあと、賃借人の会社の全株式が、東証一部上場の大手飲食チェーンを営む株式会社に譲渡されていることが判明しました。店舗は以前と同じ状態で営業は続けていますが、法人の代表者や店長・従業員はすべて変わっています。

 

契約書では、「賃借人の株式譲渡、役員変更等の重大な変更により、賃借人が契約当時と実質的に企業の同一性を欠くに至った場合、これを賃借権の譲渡とみなし、事前の承諾を要する」と規定していますが、賃借人の上記全株式の譲渡について当方は承諾をしていません。

 

賃借権の無断譲渡、契約違反として、契約解除はできますでしょうか。

 

弁護士の解説

本件は、東京地方裁判所平成18年5月15日判決の事例をモチーフにしたものです。賃借人が株式会社などの法人である場合に、賃貸借契約期間中にM&A等によって賃借人の法人の資本構成(株主)や取締役等の経営陣ががらっと変わるということは生じ得ます。

 

このような場合に、

 

・法人の株主構成等が変わることが「賃借権の譲渡」にあたるか

・法人の株主構成等が変わったことが契約解除事由となるか

 

という点が問題となります。

 

まず、そもそも「法人の株主構成等が変わることが「賃借権の譲渡」にあたるか」という点については、

 

「賃借人である法人の構成員や機関等に変動が生じても、法人格の同一性が失われるものではない」

 

ということを理由に、賃借権の譲渡には当たらない、とするのが裁判例の考え方です。

 

もっとも、例外的に、賃借人の資本構成が変わったあとに法人格が形骸化して活動の実態が無くなり他の株式会社と同一視されるような状態に変わった場合には、賃借権の譲渡がされたものと同視されることがあります。

 

以上のように、賃借人たる法人の株主構成等の変化があったとしても、原則として賃借権の譲渡には該当しません。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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