電帳法改正とインボイス制度とデジタルが経理を変える
法律は、社会活動を変化させ、仕事を変えます。経理の仕事を変えるのが税法です。電帳法改正と消費税のインボイス制度は、経理の仕事に大きな影響を及ぼします。
そしてもう1つ、仕事に影響を与えるのが新しい道具の登場です。経理社員はソロバンから電卓、パソコンと道具を持ち替えてきました。法律と道具の2つが変わると、仕事にダブルでインパクトを与えます。この約30年間の変化を見れば明らかです。
平成元年に消費税が税率3%でスタートし、経理の仕事を複雑にしました。この煩雑な消費税の問題を解決したのがパソコン会計でした。パソコンとWindowsと会計ソフトが、経理社員に代わって面倒な消費税の処理をこなしてくれたのです。社内が有線LANで接続され、営業部門の販売管理ソフトと経理の会計ソフトが連動し、経理の仕事はラクになっていきました。
現在、会計ソフトなしで消費税の計算ができる人はいないでしょう。道具は仕事を簡単にして、仕事ができる人を増やします。経理事務は単純な入力作業になり、正社員の仕事ではなく、派遣社員やパート社員の仕事になりました。
すでに4割以上が非正規社員に代わっています。時代が令和になり、消費税が複数税率になり、インボイス制度が導入されます。会社が発行する請求書や領収書にインボイス登録番号を付すことが義務付けられ、経理は番号を毎回確認しなければならなくなります。
また、コロナ禍でテレワークする会社が増え、紙やハンコでは仕事が回らなくなり、電子帳簿保存法が改正され、伝票や帳簿、請求書や領収書のペーパーレス化が促進されていきます。
そこで登場する新しい道具が、電子インボイス、AI-OCRなど各種のITツールやクラウドサービスです。電帳法改正とインボイス制度という変化を受けて、新しいデジタル技術を利用することにより、経理の仕事が自動化しオンライン化されていくということを、本書を通して理解していただければ幸いです。
経理に与えられた「自由」が“格差を生む”…
経理のデジタル化は、あくまで任意です。アナログを続けるかデジタルで処理するか、選択は自由です。自由は格差を生みます。デジタルを選択した会社は生産性、収益性、成長性が向上し、アナログの会社とは圧倒的な格差が生じます。それぞれ異なる環境で働く経理社員も、スキルの格差、キャリアの格差、賃金の格差は避けられません。
さらに、事務作業中心のアナログ経理の会社では、人材が育ちません。せっかく優秀な若手社員が入社しても、3年以内に退職していきます。先輩や上司の業務内容や働き方を見ていて、ここで働き続けてもキャリア形成できないことを自覚するからです。
将来性のある若い人材の成長を邪魔するのは、いつの時代も中高年の世代です。自分たちが構築してきた仕事のやり方を否定されるのが怖いからです。