(※画像はイメージです/PIXTA)

日々進むDX。その中で、最もDXが進んでいないと言われている分野が「経理」です。そのせいで、テレワーク・在宅勤務もできない状況です。経理のDXについて、税理士・児玉 尚彦氏、上野 一也氏が、著書、『改正電子帳簿保存法とインボイス制度対策のための経理DXのトリセツ 』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

経理のケアレスミスで会社に多大な損失

経理ミスは会社の信用問題にまで発展することがあります。経理部では会社の数字やお金を扱っているので、社会への影響が大きく、ミスした場合「ごめんなさい」では済まないからです。

 

たとえば、外注業者への支払いが一件もれただけで、業者間で支払い不安が噂になり仕事の依頼が滞ることがあります。また、経理社員が誤って売上高を二重に計上してしまったことにより、銀行から粉飾決算を疑われ融資を断られたケースもあります。

 

慎重な経理社員でもミスをすることはあります。始末書を書いて、「次からは注意します」と反省しても、本質的には何も解決されていません。

 

会社としては、ミスが発生しないデジタルの仕組みを作って、1日も早く問題を抜本的に解消しておきましょう。

経理の「社会的手抜き」

経理の伝票や書類を見ると、作業や承認経路の順にハンコが押されています。本来は責任の所在を明確にするためのものですが、作業を進めるうえでのスタンプラリーのように形式的なものになっている場合が少なくありません。

 

集団で共同作業するときに人数が増えるほど一人あたりの生産性が低下する現象は「社会的手抜き」と呼ばれ、多くの仕事で確認されています。経理の仕事でも、処理結果を複数でチェックしてもミスがなくならない原因の一つが「社会的手抜き」です。

 

作業者は「間違えていたら後でチェックする人が訂正してくれるだろう」と考え、一方で検証者や上司は「担当者がしっかりやっているからミスはないだろう」とチェックが甘くなりがちだからです。こうしてエラーがスルーされてしまうことがよくあります。

 

 

だからといって、少額の経費精算や重要性の低い経理処理について、複数人の時間と神経を使って書類の細部までチェックする価値があるとは思えません。

経理部門のミスを撲滅できる方法

複数人での繰り返しチェック作業は、労多くして功少なしだからです。少人数でミスが少ない経理部門では、経理社員は単純な入力やチェックなどの作業をコンピュータにやらせています。

 

経費精算や会計仕訳、支払などの各業務ごとにRPA(Robotic Process Automation;プログラム開発が不要でパソコンの操作手順を登録して簡単に作業を自動化する仕組み)などのITツールを利用しているのです。

 

入力作業だけではなく、これまで経理社員がしていたチェックリストの項目を登録しておけば、チェック作業もコンピュータに代替させられます。

 

大量で形式的なチェックはコンピュータにやらせて、金額が大きく重要性が高い取引など人間が行うべき業務を再度、経理社員が重点的に時間をかけて検証するようにするのです。

 

こうやって、コンピュータが得意な仕事と人間が判断すべき仕事を区分して、効率的かつ効果的にチェックすれば、経理部門のミスを撲滅することができるでしょう。

※ 本連載は、児玉 尚彦氏、上野 一也氏の著書『改正電子帳簿保存法とインボイス制度対策のための経理DXのトリセツ 』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです

経理DXのトリセツ

経理DXのトリセツ

児玉 尚彦,上野 一也

日本能率協会マネジメントセンター

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