(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、需要が高まるなかでもなかなか普及しない背景にはワケがあると、ねりま西クリニックの大城堅一院長は指摘します。日本の医療業界が抱える複雑な事情をみていきましょう。

地域により病院の後方支援体制は異なる

在宅患者に緊急時のベッドを提供する病院は「在宅療養後方支援病院」と呼ばれます。設置基準としては、以下のような要件があります。

 

・許可病床200床以上

・在宅医療を提供する医療機関と連携し、24時間連絡を受ける体制を確保

・連携医療機関の求めに応じて入院希望患者の診療が24時間可能な体制を確保(病床の確保を含む)

・連携医療機関との間で、3カ月に1回以上、患者の診療情報の交換を行い、入院希望患者の一覧表を作成

 

ただし在宅患者の緊急の入院受け入れをしている病院の数は、地域によって異なります。

 

東京都では地域の在宅医からの入院要請に応える病院として「地域医療支援病院」の認定があります。この認定を受けている病院は、二次医療圏(地域医療計画の基本単位)ごとに1~6病院程度です。

 

私のクリニックのある練馬区で見ると、豊島区、北区、板橋区、練馬区という4区のエリア内に5つの病院があります(2022年3月時点)。都のなかでも病院数・病床数は多いほうになります。

 

一方、都内でも少ないところは3区で2病院の地域もありますし、多摩地域では8市町に対して病院が1つのところもあります。

 

厚生労働省の委託事業で、2018年に株式会社日本能率協会総合研究所が「在宅医療連携モデル構築のための実態調査」を行っています[図表]。対象は在宅医療連携の取り組みを先進的に行っている地域の380診療所、5病院(有効回答124)です。

 

[図表]診療所のある地域での在宅医療における課題(複数回答)

 

そこで「診療所のある地域での在宅医療における課題」を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのが「在宅医療に携わる医療従事者(マンパワー)の確保(72件)」でした。それに次いで多かったのが、「急変時等に対応するための後方支援体制の整備(64件)」です。

 

この調査の対象となった在宅医療連携の先進的な地域ですら、後方支援体制の整備が十分とはいえないわけですから、その他の地域はさらに困難な状況にあることが想像されます。

 

病院の後方支援が十分であれば、高度医療が必要な人や急変のリスクが高い患者も在宅医療をできる可能性が高くなりますが、そうでない場合は、「在宅では責任をもてないから、受け入れられない」となってしまうのです。

 

 

大城 堅一

医療法人社団星の砂 理事長

ねりま西クリニック 院長

 

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※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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