認知症の80代男性、脳梗塞に肺炎で家族「もう、むりか」…医師の助言で起きた“小さな奇跡”【事例紹介】

認知症の80代男性、脳梗塞に肺炎で家族「もう、むりか」…医師の助言で起きた“小さな奇跡”【事例紹介】
(※写真はイメージです/PIXTA)

要介護度5の80代男性Cさん。脳梗塞に加え、誤嚥性肺炎で口からの食事ができなくなり、認知症も進んでいます。慢性期病床を退院せざるを得なくなりましたが、家族はフルタイムで働いており、自宅での介護は困難……。そこで家族は、筆者のクリニックに「在宅医療」の相談をしました。半年後、Cさんに起きた小さな奇跡とは? ねりま西クリニックの大城堅一院長が解説します。

要介護度5…嚥下機能低下で「胃ろう」を造設したCさん

【基本情報】

・年齢性別:80代・男性Cさん

・住まい:サービス付き高齢者向け住宅に入居

・家族:地域に息子夫婦が居住

・既往歴:認知症、多発性脳梗塞、誤嚥性肺炎など

・要介護度:要介護5

・在宅医療期間:2021年6月~

 

在宅医療導入までの経緯

Cさんは早くに奥さんを亡くし、以前は社会人の娘さん、息子さんと3人で生活していました。Cさんは70代のときに脳梗塞を発症しています。幸い命はとりとめ病院での治療後に自宅に戻っていましたが、その後にも脳梗塞の再発があり入退院を繰り返すうちに、次第に認知機能も低下していきました。

 

2021年の初めには誤嚥性肺炎を起こして緊急入院、急性期病院で治療を受けるうちに認知症が進み、ほぼ寝たきりの状態になりました。嚥下機能も低下して口から食事を取れなくなったので病院で胃ろうを造設しました。

 

しばらくは慢性期病床で療養を続けましたが退院せざるを得なくなり、退院の際に家族から「今の状態で自宅に戻って生活するのは難しいのでは」と私のクリニックへ相談がありました。

家族による介護は困難…高齢者用住宅で在宅医療開始

在宅医療の内容

まずはCさんの状態を診察するとともに、家族から生活状況等の聞き取りを実行。娘さんも息子さんもフルタイムで働いており、深夜の帰宅や出張もあるということで、胃ろうの父親を自宅で介護するのは困難という意見です。そこでCさんに看護師が常駐している高齢者用住宅に入居してもらい、在宅医療を開始することになりました。

 

私たちは脳梗塞の再発を防ぐことを第一に、認知症のあるCさんが安心して生活できる支援を検討し、月に2回、内科の主治医が訪問して全身状態を診察、日々の経管栄養の管理は高齢者向け住宅の看護師が対応することとしました。

 

また寝ている時間が長く胃ろうで栄養を取っているCさんは褥そうや皮膚炎を起こしやすいことから、主治医が必要に応じ皮膚科医に相談する体制を整えました。

 

在宅医療を始めて半年以上が過ぎた頃にはCさんの状態はだいぶ安定し、休日に娘さんや息子さんが面会に行くと簡単な言葉を交わせるようになり、娘さんから「少量でもいいので、口から食事摂取ができないか」と主治医に相談がありました。

 

そこで耳鼻咽喉科専門医がCさんの嚥下機能評価を行い、嚥下訓練をスタートしました。まず氷や角砂糖といった口腔内で溶けるものから開始しそれで問題がなければ次の段階へと進める予定です。

 

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次ページ在宅医療でCさんにみえた「変化」とは…

※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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