(※写真はイメージです/PIXTA)

NY州弁護士・秋山武夫氏の著書『司法の国際化と日本』より一部を抜粋・再編集し、「司法の国際化」が急速に進む今、日本はどう対応するべきか、日本企業はどう生き延びていかなければならないのかを考えていく本連載。この記事では「米国司法について日本人が抱いている誤解」について見ていきます。

不正を告発した部長には「6億5000万円」のご褒美が

医療機器の販売に関し不正があったとして6億3000万ドル(約820億円)を超える賠償金を支払わされた日系企業では、社内のコンプライアンス部長が不正を告発し、“ご褒美”として5000万ドル(6億5000万円)も受け取りました。最近も、自動車部品の欠陥をめぐって訴訟が相次ぎ、日本の名門企業が倒産しました。

 

これらの事件を単に知識として受け入れ「アメリカは日本とは異質の国だ」「とんでもない訴訟大国だ」と単純化しても、学ぶことはできません。一見極端に見える訴訟例であってもその背景をよくよく探っていくと、「とんでもない」どころか科学的、合理的な判断であることに気づきます。

 

根底にある考えを理解しようとせず「とんでもない」と思い込んでいる限り、米国での企業活動で一体全体どうしたら計算されたリスク回避ができるのかと、途方にくれるだけでしょう。

 

「司法の国際化」「米国司法の世界スタンダード化」についても同様です。「米国はとんでもない国だから」と思考停止してしまえば、真の課題「司法の国際化」に向き合うことはできません。

 

世界進出している企業はもちろん、一見、日本国内だけで活動している企業であっても、実際は何らかの形で海外とつながっていることは少なくありません。日本がガラパゴス諸島ではなく、世界と関係を作りながら経済活動をしている限り、「司法の国際化」は私たちにとって必ず大きな課題になります。

 

「司法の国際化」の波は実に激しいものがあります。現実に日本の多国籍企業のコンプライアンスハンドブックは、多くの紙面が米国法の対応のために費やされております。

 

しかし残念ながら多くの日本企業や日本国の司法への対応は、私の目から見れば極めて遅れています。日本が国際化の波の中で果たして生き残れるのか大いに疑問です。

 

 

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秋山 武夫

NY州弁護士。

1969年一橋大学法学部卒業、同年丸紅に入社、以来50年にわたり国際法務の現場で活躍。

1975年ワシントン大学ロースクール卒。

元ピルズベリー・ウインスロップ・ショー・ピットマン法律事務所シニアパートナー。

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『司法の国際化と日本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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