バブルによりテクノロジーが格段に発展を遂げる
しかしながら、バブルとは必ずしも悪いものではない。たとえば、新しい技術や新しい商品の登場が契機となって起きたバブルは、基本的にそのおかげでさまざまな企業にお金が集まる。その結果、技術がさらに進み、バブルが崩壊した後も残った企業が世の中に貢献していくわけである。
英国の場合、鉄道バブルのときは、無駄に多くの鉄道をつくったが、結局、そのおかげでいろいろな技術が発展した。機関車をつくる技術、線路を早く敷設する技術、トンネルを掘る技術、等々。
自転車バブルのときも、繰り返しになるが、タイヤの技術が凄まじく発展して、ダンロップやミシュランといった企業を産み落とし、現在に至っている。
米国のITバブルのときは8割、9割のIT企業が消えてしまった。だが、グーグルやアマゾンはしっかりといまも残って、存在感を示している。
後世にレガシーを残さない不動産バブル
そうした観点で考えると、不動産バブルは一番タチが悪い。バブル崩壊後にとてつもないダメージを与えるばかりで、技術やサービスを何も残さない。
これは日本の場合もそうだった。1980年代の日本の場合、これは完全に不動産バブルなので、終わった後に日本経済は長期にわたる低インフレ・低成長の時代に突入していった。これは先にふれた1900年初頭に崩壊したオーストラリアも同様で、景気が元に戻るのに約30年を費やした。
エミン・ユルマズ
複眼経済塾取締役・塾頭
著者画像撮影 Rikimaru Hotta