(※写真はイメージです/PIXTA)

様々な要因によって世界的なインフレが起こり、将来の展望が正確に描けない昨今。自身の資産を守り、未来につなげていくためには、どのような行動を取ればいいのでしょうか。複眼経済塾の取締役・塾頭、エミン・ユルマズ氏が、著書『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)から、世界経済の展望と、日本経済に潜むチャンスについて解説します。

マネタリーベース=日銀の総資産金額

マネタリーベースという言葉をご存じだろうか。

 

日本銀行が金融部門を含めた経済全体に供給する通貨量を集計した統計で、日銀の総資産金額のことを指す。

 

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

 

では、日銀の総資産はどのように変化しているのだろうか。2012年9月から2021年9月の9年間で日銀の総資産は150兆円から724兆円と4.8倍に膨らんだ。マネタリーベースではそれだけ供給されたわけである。

 

FRBの総資産はどうかというと、2021年12月中旬で約8兆7,000億ドル(約992兆円)と2012年12月の2兆8,600億ドルから約3倍に膨らんだ。ただしFRBの場合、2008年9月のリーマン・ショック発生時から比べると約10倍になっているので、日本よりアグレッシブに金融緩和をしているのがわかる。

同じようにベースマネーを増やしてきた日米のインフレ率に差が生じるワケ

①「借金」に抵抗がない米国の国民性

みんなが疑問に思っているのは、日米がほぼ揃ってベースマネーを盛大に増やしてきたのに、なぜ、米国のみがこんなにインフレが高まって、日本のインフレ率は少し上がってきてはいるものの2%にすら至らないのか、そこだろう。

 

端的に示すと、国民性の違いである。ベースマネーとは日銀が銀行に供給するお金のことだ。さらに経済にとり重要なのはトータルマネー(=ブロードマネー)で、現預金通貨に譲渡性預金、信託、国債、外債などを含めた、銀行がつくっていくお金である。日銀がいくらベースマネーを増やしても、トータルマネーが増えなければインフレにはならない。

 

要は日本国民が優等生すぎて、ベースマネーが増えてもお金を借りなかったのだ。それどころかどんどん借金を返していった。一方、一般的な米国人はベースマネーを増やしたら、すぐに借金に走るわけだ。米国企業も同じで、お金を貯ためずに借金をする。

②「借金」は一刻も早く返済したい日本の国民性

現在の局面においてもそれは変わらず、米国企業の債務は増えている。相変わらず銀行からお金を借りては、自社株買いに勤しんでいる。

 

かたや日本の民間企業の債務は、どんどん減り続けている。借金を返し続けている。これを経済用語では「デレバレッジ」という。つまり日本企業は1990年代のバブル崩壊以降、ずっとデレバレッジしてきて、いまも依然としてデレバレッジしている。

 

このような状況ではトータルマネーはさほど増えない。トータルマネーが増えるためには、市中銀行が日本企業や日本人にお金をどんどん貸し出さなければならない。信用創造でお金をつくらなければならないのだ。

 

この概念は理解しにくいのだが、お金をつくっているのは中央銀行ではなく、誰かの借金によって、信用創造が行われているということだ。

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本連載は、エミン・ユルマズ氏の著書『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

エブリシング・バブルの崩壊

エブリシング・バブルの崩壊

エミン・ユルマズ

集英社

不安定な社会情勢のなかで、日本の投資家はどのように資産防衛・運用を行えばよいのでしょうか。今後の世界経済に大きな影響を与えるであろう「エブリシング・バブル」と呼ばれる米国発のバブルと、その周辺事情について解説。

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