(※写真はイメージです/PIXTA)

様々な要因によって世界的なインフレが起こり、将来の展望が正確に描けない昨今。自身の資産を守り、未来につなげていくためには、どのような行動を取ればいいのでしょうか。複眼経済塾の取締役・塾頭、エミン・ユルマズ氏が、著書『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)から、世界経済の展望と、日本経済に潜むチャンスについて解説します。

日本を襲う未曽有のインフレが市場を圧迫

このところ日本株の動きが冴えないし、チャートの形が悪い。経験上、このような場合には、企業業績やコメントには見えない何か悪い要素を市場が検知し、株価に織り込んでいる場合が多い。

 

前の菅政権による携帯料金の値下げがなければ、日本のインフレ率は1.6%になっていたと、新聞各紙が書き立てている。

 

企業はそんなにすぐには最終商品の値上げはできないから、いまのように円安で輸入コストが上昇すれば利益が圧迫される。円安で喜んでいる企業もあるにはあるが、今回の円安は多くの日本企業にとって、あまり良い円安ではないと思われる。

 

その影響が出ていて、結果的に業績悪化、利益圧迫を嫌がって、株価が下がっているのではないか。そしてもう一つは岸田政権がマーケットから好かれていないことが、株価下落をもたらしているということだ。岸田政権発足以来の月足チャートがきわめて悪いのが、その証左といえる。

 

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市場の信頼を損ねた岸田首相の「日和見発言」

岸田政権が自社株買いを制限しようとしたり、金融所得増税をしようとしたのを見て、彼は、あまりマーケットフレンドリーな政治リーダーではないと、市場は判断したのだろう。それが日本株の動きに反映している。

 

市場が岸田首相を嫌っているのは、日経平均に如実に表れている。前首相の菅氏が退陣を表明、総裁選が行われることが決まったとき、日経平均は高値を付けた。下げ出したのは、総裁選前に最有力候補と見なされた岸田氏が金融所得増税を導入する構想を示してからだった。

 

市場のあまりに悪い反応に岸田氏は、発言を慌てて撤回、「いま直に金融所得増税をするわけではない」と二枚舌を使ったことから、市場の信頼をおおいに損ねてしまった。以降、菅前首相が辞任発表の日に付けた日経平均の高値には戻らなかった。

 

「結局、岸田首相は金融所得増税を導入するのではないか」とするマーケットの疑心暗鬼は収まらず、岸田首相はまたも前言を翻した。さらには「自社株買いに制限をかける」と発言し、再び日経平均を下げてしまった。こうした経緯は日経平均を月足で見ると、本当にわかりやすい。

 

菅前首相のときも大きな下向線は出ていたが、それはデルタ株絡みで、菅氏の発言そのものが下げ要因になったのではない。ところが岸田首相の場合、コロナの状況が良くなっているのに、日経平均が下がっているわけで、本来はおかしな話なのだ。岸田首相は財務省に傾斜しているのではないか。

 

市場としては、そんな印象を抱いてしまったのだろう。この首相の下では、株式投資を難しくしてしまうリスクがあるのではないかと。そうなるとますます、米国株に比べると日本株の魅力が薄れてしまうわけである。円安にもかかわらず、日経平均が下がっているということは、ドルベースにおいてはさらに大きく下がっている。海外の投資家も岸田首相のことをかなり研究しているようだ。

 

聞くところでは、岸田政権は財務省のアドバイスをよく聞いているのか、どうも緊縮財政をやりそうな気配だと感じ取っている向きがかなり多い。「子育て世帯への臨時特例給付金」の話もややこしかった。これについても、無駄にややこしくしているとしか思えないフシがあった。18歳以下の子どものいる全世帯に10万円をそのまま配ればよかったのだ。そこに960万円という年収の壁を設けたりした。

 

私は、子どもに渡すお金なのだから、親の収入は関係ないはずで、矛盾していると思った次第である。このあたりも微妙に、岸田首相はマーケットフレンドリーではないと、市場に捉えられたのではないだろうか。

 

一時高値を付けた日経平均は10月初旬には2万7,000円台半ばに急落し、「岸田ショック」と呼ばれた。下げ幅は11.3%に及んだ。新首相就任直後にショックを起こしたのだから、これはきわめて不名誉なことだと言わざるを得ないだろう。

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    本連載は、エミン・ユルマズ氏の著書『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

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