インフレが止まりない米国が、デフレショックに見舞われる可能性も
金融市場にお金があふれ、リスクオン、リスクテイク志向が高いときには、ありとあらゆるリスク資産は換金性が高くなり、現金性が高まる。昨年(2021年)の暗号通貨(仮想通貨)などの暴騰はその典型だ。
けれども、リスクオフになると、このようなリスク資産は、たとえば恒大集団の社債のようなものについては買い手がつかず、現金性が一気に低くなってしまう。
いまの米国はインフレにはなっているが、アセット(資産)バブルが崩壊するとデフレショックに見舞われる。そのかげりが見え始めた。
エブリシング・バブルとITバブルの決定的な違いとは?
繰り返しになるが、私は最初、これは普通の強気相場だと考えていた。しかも、そのスタートがコロナショックのクラッシュの直後だと。そうなると、どこかで自然に調整が入るだろう。調整幅はおそらく5%ないし10%だろうと踏んでいた。しかしこれは間違っていた。
当初私は、「ITバブルのときには、どうでもいい役に立たない企業にただ『ドットコム』が付いているだけで株価が上がっていた。だが今回株価を上げているのはGAFA(Google、Apple、Meta〈Facebook〉、Amazon)で実態が伴っている」と、主張していた。しかし、その後ITバブル同様に中身のない、ファンダメンタルズが伴っていない企業の株価が暴騰し始めた。いわゆる「ミーム株」である。
そして実態はあるとはいえ、GAFAの時価総額はバカバカしいレベルに達した。たとえばアップルの時価総額が一時3兆ドルを超えた。これはドイツのGDPに近い数字であり、当然ながら一社だけで世界のパワーハウスの一つであるドイツの経済規模になるのはおかしな話である。
さらにITバブルのときはIT企業株が特に高騰したが、今回はありとあらゆる分野でバブルが起きている。IT、半導体、電気自動車、オルタナティブ・エネルギー、バイオテックをはじめ、すべてのセクターがバブルである。
加えてリーマン・ショック直前のように、米国では不動産までがバブルに陥っている。そしてリーマン・ショック時には存在しなかった仮想通貨やNFT(非代替性トークン)も、バブルの真っ最中だ。それらの時価総額が2兆ドル(約230兆円)を超えるなど、とんでもないことになった。
これらをひっくるめた、いまの米国における経済現象を、エブリシング・バブルと私は呼んでいる。
今回のエブリシング・バブルと2000年のITバブルとは、株の世界においても大きな違いが見て取れる。ITバブル時はほとんど実体のない企業の株が買われていたが、それでも実際に株が買われていた。
それでは今回は何が起きているのか? 株ではなくオプションが買われているのだ。