お客の話をさえぎらないのが営業のルール
そのコーチングで「他には?」という質問をすることがありますが、この訊き方により相手は話を水平展開していくことになり、より具体性が引き出されます。例えば、
あなた:「将来の夢はなんですか?」
相 手:「家族と海外旅行ですね」
あなた:「いいですね。海外旅行ですか。他にはありますか?」
相 手:「そうですね。宅建の資格を取りたいかな」
あなた:「宅建の資格ですね。他にありますか?」
相 手:「うーん……実は独立したいという夢があるんです」
といった質問の仕方です。
「他には?」と質問すると相手の話がどんどん横=水平展開していきます。
2つめの「具体的には?」は、話をより明確にするための質問の仕方です。
あなた:「将来の夢はなんですか?」
相 手:「家族と海外旅行ですね」
あなた:「家族と海外旅行ですか。具体的にはどんなことでしょう?」
相 手:「年に1回は家族全員で海外に行きたいです」
あなた:「年に1回ですね。よければもう少し具体的に教えてもらえますか?」
相 手: 「実はまだ子どもが小さかった頃にハワイに家族旅行したことがあってとても楽しい時間を過ごしました。あの思い出が忘れられなくて。だから年に一度は家族とハワイに行って2週間くらいのんびりと過ごしたいです」といった展開になります。
「具体的には?」という質問によって、最初の答えである「家族と海外旅行」という夢がよりはっきりしていきます。
このように「具体的には?」という質問を使うことによって相手の目標や本心がより細かい描写になり、漠然としていた話の内容がより明確になります。
3つめの「何のために?」という訊き方は、抽象度の高い話を具体的にする質問の仕方になります。
あなた:「将来の夢はなんですか?」
相 手:「家族と海外旅行ですね」
あなた:「家族と海外旅行ですか、いいですね」
相 手:「たまには家族サービスもしないといけないですから」
あなた:「海外旅行は〇〇さんにとって何のために必要なのですか?」
相 手:「……私はここ数年、ずっと仕事ばかりしてきたので家族と過ごす時間がなかなか取れませんでした。最近では家族と言葉を交わすことも少なくなり、気持ちが少し離れている感じがするのです。仕事を離れて昔のように仲良く楽しく過ごす時間が必要なのではないかと考えているものですから」
といった質問になります。
「何のために?」という質問を繰り返すことによって、相手が本当に欲しているモノやコトが具体化されていきます。
⑥話を要約して返す
会話の合間に、ときおり、相手の話を要約して返してあげることで共通理解が促され、それによりお互いの共有意識が深まります。
例えば、込み入った話などでは、
「なるほど、それは〇〇ということでしょうか?」
「つまり、お客様は〇〇〇ということをおっしゃりたいのですね?」
といった形で話の内容を要約するようにすると、ストレスなく会話が進み、そのことで双方の理解し合う気持ちが強まります。
ここまで傾聴するための秘訣を述べてきましたが、基本はお客様の話すことをどんなことでも受け止めるという姿勢です。
ですから、仮に異論があったとしても、まずはお客様がすべてを話し終えるまで聞き役に徹することが重要です。
決して、お客様の話をさえぎらないことが営業のルールです。
営業は「お客様の話を聴くことが重要な仕事だ」と認識する
酒井 とし夫
マーケティング・コンサルタント