強くお客に印象を残す方法はあるか?
■提案は最初か最後にすると、印象に残りやすい
「終わりよければ、すべて良し」と言われますが、ブティックや宝飾店などで買い物を終えたお客様が店外に出たあとも、その姿が見えなくなるまで深々とお辞儀をしている店舗スタッフの姿を見ることがあります。
気持ちよく買い物をされたお客様により親近感を覚えてもらうための行為の1つですが、人は最後に経験したことほど強く印象に残りやすいという結果が得られた心理実験があります。1976年にアメリカの心理学者ノーマン・H・アンダーソンによる実験です。
彼は模擬裁判を行うなかで、検察官と弁護人のいくつかのパターンのやりとりの末、陪審員の審議に最も影響を与えたのが最後の証言でした。人は複数の提示を受けた場合、最後に出されたものを選びがちだということで、これを「親近効果」と言います。
この説に従えば、競合コンペなどでのプレゼンは最後に行うほうが共感を得やすいということです。
ところで、最初に提示したものほど印象に残りやすいという心理実験の結果もあります。これは、「初頭効果」と言われるもので、1946年にポーランドの社会心理学者ソロモン・アッシュによって行われました。
ある人物の印象について、A「ポジティブからネガティブ」とB「ネガティブからポジティブ」の単語の並べ方にしたところ、Aのほうはその人に対してポジティブな印象を、Bのほうはネガティブな印象を抱きがちだということがわかりました。
つまり、「初頭効果」とは、相手に一番伝えたいことをはじめに打ち出すことが有効だということです。
商品を顧客に提案するとき、最も好印象を抱いてほしいことを冒頭に示すことが商品そのものやあなた自身のポジティブさを訴求することにもつながります。
▶営業力を上げるコツ
提案には印象づけるタイミングがあることを知る
■自分の名前の前に形容詞をつけると、記憶に残りやすくなる
営業は、お客様に憶えてもらうこと、強く印象を残すことは基本中の基本です。
私自身、お客様に強くインパクトを残すためにいろいろなことを実践してきていますが、そのうちの1つが、印象に残りやすい「自分のキャッチコピー」とは何かを考えることでした。
これまで私は営業・マーケティングコンサルタント、講演家として多くの人たち、それも営業やマーケティングに関係する人たちと名刺交換をしてきました。
名刺交換をする相手の人から
「□□株式会社営業担当の大谷と申します」
「株式会社△△で営業をしております河上です」
などと言われるわけですが、一度に何十人もの方と名刺交換するセミナーなどでは相手の人の名前とその人の印象が1週間も経てばあやふやになっていることが多いのです。
ですが、
「社内で連続6カ月売上ゼロのワースト記録を持つ、○×株式会社営業担当の大谷と申します。大谷翔平の大谷です」
「元財務官僚で、現在株式会社△△で営業統括をしております河上です。河上の河は三本川ではなく、サンズイに可能の可です」
と名刺を差し出された人に限っては、その人の顔と名刺をまじまじと見て、後々も「ワースト記録の大谷翔平の大谷さん」「元財務官僚のサンズイの河上さん」として印象に残っています。
これはいいと、私もこの方法をいただきました。
「小さなプレゼンでもあがっていましたが、400人の前でも普通に講演できるようになった酒井です」
これがその頃使っていた私のキャッチコピーです。
自分を下げてから上げるというギャップがあって、そしてどこかにユーモアが感じられるようなキャッチコピーです。
このようにストーリー性があり、しかも相手にとって突っ込みどころのある自己紹介はすぐに対話が始まるのでとても印象に残ります。
▶営業力を上げるコツ
自分を特徴づけるキャッチコピーを考える