これまでは「去る者は追わず」が基本姿勢だったが…
ここまでの空室対策は「既存入居者」と「新たに部屋探しをしている人」に対する取り組みでした。では「退去が決まっている人」に向けた対策はあるでしょうか。
転勤や卒業などでの引っ越しはやむを得ない退去ですから、当然ながら引きとめることはできません。そのため、これまでの賃貸管理業界は〝去る者は追わず〟の姿勢で何も対策をしてきませんでした。
しかしオーナーにとっては、せっかく「貸主」と「借主」という関係でつながったわけですから、やむを得ない退去で入居者が引っ越しをすることになっても、何らかのアプローチをしたいものです。
退去予定者に「他エリアの空室一覧表」を送る方法も
そこで現在、筆者の会社が進めているのが0円賃貸物件の入居者の囲い込みです。
0円賃貸物件の入居者にアンケートを実施し、退去を検討している人がいたとします。引きとめられる理由ではないと判断した場合、その退去予定者に対して「0円賃貸物件の空室一覧表」を提供するのです。
0円賃貸物件に入居した人の満足度は高く、転居先で借りる賃貸マンションも同じく入居時費用ゼロ円で入りたいという希望を持っています。そのニーズに応えるべく、退去前から0円賃貸物件の案内を行うわけです。
退去予定者にとっては自分が次に借りたい物件の空室一覧表が手に入るわけですから、悪い印象はまず持ちません。それどころか、次の転居先エリアに該当する物件があれば率先して問い合わせをしてくれるでしょう。
0円賃貸物件は入居率が高いので、転居希望者がめぐり会える確率は高くはありません。転居先エリアに0円賃貸物件があり、さらに偶然空いていた場合に限って借りられる、まさに〝宝探し状態〟なのです。
そのため、退去予定者にとってその一覧表は、宝の在処を教えてくれる貴重な資料ともなり得ます。