テック規制の現在地とアリババの行く末
中国当局によるテック系企業の締め付け。中国株の押し下げ要因にもなっていたが、ここに来て緩和方向に動いている。業界では何が起きているのか。
まずは時系列で見てみよう。アリババ傘下のアント・グループの上場延期騒動が起きたのは2020年11月。これに前後してネット関連規定が続々公表され、同12月の中央経済工作会議では「独占禁止と資本の無秩序な拡大の防止を強化」する旨が示された。プラットフォーム企業の管理強化である。
その後の調査と罰金処分は容赦ない。アリババ集団(09988)は独占禁止法違反で罰金182億2,800万元(21年4月)、美団(メイトゥアン、03690)も同法違反で罰金34億4,200万元(21年10月)、滴滴出行(DIDI)はインターネット安全法違反などで罰金80億2,600万元(22年7月)が課された。
風向きがやや変わったのは22年4月の中央政治局会議。この場で「プラットフォーム経済の健全な発展を促進する」との方針が確認された。同11月には人民網が、ゲーム産業が「野蛮な成長」から脱しつつあると指摘。ゲームの商用化認可リストに久々にテンセント(00700)のタイトルが入ってきた。
22年12月の中央経済工作会議では「プラットフォーム企業を支援し、経済発展、雇用創出、国際競争をリードさせる」方針が示された。銀行・保険管理当局の郭樹清主席は、プラットフォーム企業14社の金融業務について「基本的に是正はすでに完了した」と発言(新華社1/8付)。
今年1月16日には、滴滴が21年7月から停止していた新規ユーザーの登録を始めると発表した。同社発表文書には「ネット規制当局の安全審査に真摯に従って」とあり、かなり厳しい業務改善命令などがあったと推察される。
1月4日には、アント・グループの消費者金融子会社による105億元規模の増資計画が管理当局の承認を取得したと報じられた。同子会社は、当局からガバナンス改善などを求められていたアントが21年に分離独立させた企業。外部株主の受け入れに伴い経営の透明性向上が見込まれる。