(※画像はイメージです/PIXTA)

岸田首相は2023年2月1日の衆議院予算委員会で、社会保険料に関するいわゆる「年収130万円の壁」を見直す方針を表明しました。しかし、「壁」は他にもあります。また、「壁」の背景には抜き差しならぬ諸問題があります。本記事では、社会保険制度および所得税・住民税に関する「壁」の概要と、その背景にある様々な問題点について解説します。

そもそも「~万円の壁」とは

まず、所得税、社会保険制度に関する様々な「~万円の壁」がどのようなものか、整理すると、以下の通りです。

 

【所得税等の税制に関する壁】

・「103万円の壁」:年収103万円を超えると配偶者控除の対象から外れる(ただし「配偶者特別控除」の対象)

・「150万円の壁」:年収150万円を超えると段階的に控除額が減る(配偶者特別控除)

・「201万6,000円の壁」:年収201万6,000円を超えると「配偶者特別控除」の対象から外れる

 

【社会保険制度に関する壁】

・「106万円の壁」:社会保険法上、年収106万円を超えると社会保険料の支払い義務が生じる(一定の規模以上の事業所)

・「130万円の壁」:社会保険法上、年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れる

 

このうち、「106万円の壁」については、2022年10月に大きな制度変更があったので、説明を加えます。

 

2022年9月以前は、「106万円の壁」の対象となる企業は「従業員数500人超」の企業のみでした。また、対象となる労働者は雇用期間の見込みが「1年以上」の人に限られていました。

 

しかし、2022年10月から、対象が「従業員数100人超」の企業にまで拡大され、労働者の雇用期間についても「2ヵ月以上」の人にまで拡大されました。

 

これによって、「106万円の壁」の対象となる人の数は大幅に増えました。

 

なお、2024年10月からは、対象となる企業が「従業員数50人超」の企業にまで拡大される予定です。

 

以上、「~万円の壁」について解説しましたが、これらの「壁」には主に以下の2つの問題があります。

 

【「~万円の壁」の問題点】

1. 最低賃金が引き上げられても「壁」は据え置き

2. 「壁」の制度自体が時代遅れ

 

問題点1|最低賃金引上げなのに「壁」はそのまま

過去20年間の最低賃金の全国加重平均額の推移をみると、2003年には「時給664円」だったのが、2022年10月には「961円」へと、約45%上昇しています(【図表2】)。

 

厚生労働省HP「2022年(令和4年)度地域別最低賃金改定状況」を参考に作成
【図表】過去20年間の最低賃金の全国加重平均額の推移 厚生労働省HP「2022年(令和4年)度地域別最低賃金改定状況」を参考に作成

 

物価上昇等に伴って最低賃金が1.5倍近くにまで上昇しているのに、「壁」の金額はまったく変わらないまま据え置かれているのです。

 

「壁」を気にして扶養の範囲内で働く人は、20年前と比べ、労働時間が約3分の2になっているということです。

 

つまり、現時点において、「壁」の金額の合理的根拠が乏しいといわざるを得ません。

 

では、「最低賃金の上昇に合わせて壁を引き上げる」べきかというと、そういうわけにもいきません。

 

「壁」を引き上げると、「壁」の範囲内を狙って労働時間をセーブして働く人と、「壁」を超えて働き所得税あるいは社会保険料を負担する人との間の不公平感がますます拡大するおそれがあります。

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