
本日(2023年2月2日)、政府は、現行の児童手当の制度において設けられている「所得制限」の制度を撤廃する方向で調整に入りました。与党・自民党は、野党であった2010年当時、民主党政権が導入した所得制限のない「子ども手当」の制度を厳しく非難した経緯があり、事実上の政策転換といえます。本記事では、改めて、所得制限が抱えている2つの問題点について解説します。
児童手当とは
まず、児童手当の制度についておさらいします。
児童手当は、中学校3年生以下の児童を養育している人に支給されるものです。支給額は【図表1】の通りです。

児童手当の所得制限
児童手当の所得制限はやや複雑です。制度の概要を理解するうえで「所得制限限度額」「所得制限上限額」の2つがあることを押さえておく必要があります。
◆所得制限限度額
まず、「所得制限限度額」は、児童手当を満額受け取れるかどうかの基準です。
「世帯主」の「所得」と、「親族の数」に応じて定められています(【図表2】)。

◆所得制限上限額
次に、「所得制限上限額」は、「特例給付」として1ヵ月あたり一律5,000円を受け取ることができるかどうかの基準です。2022年10月給付分から設けられた基準です。
すなわち、2022年9月以前は、「所得制限限度額」を超えていても、「特例給付」として1ヵ月あたり一律5,000円を受け取ることができました。
しかし、この「特例給付」に、2022年10月給付分から「所得制限上限額」が設けられました(【図表3】参照)。

これにより、「年収1,200万円以上」だと特例給付を受け取ることができなくなったのです。