(※画像はイメージです/PIXTA)

岸田首相は2023年2月1日の衆議院予算委員会で、社会保険料に関するいわゆる「年収130万円の壁」を見直す方針を表明しました。しかし、「壁」は他にもあります。また、「壁」の背景には抜き差しならぬ諸問題があります。本記事では、社会保険制度および所得税・住民税に関する「壁」の概要と、その背景にある様々な問題点について解説します。

問題点2|「壁」の制度自体が時代遅れ

第二の問題点は、「壁」の制度自体が時代遅れだという指摘です。

 

すなわち、「壁」の範囲内で働く人を税制上、社会保険制度上優遇することが、実質的に女性の社会進出を妨げているということです。

 

配偶者控除の制度趣旨は、税法の教科書では古くから「内助の功」で説明されることが多かったものです。

 

しかし、その語源となった安土桃山時代の武将・山内一豊の妻である千代(見性院)のエピソードは、夫が名馬を購入できるだけの大金をみずから準備したことです。そもそも「扶養」の概念と相いれません。

 

しかも、「老後不安」「年金不安」「税収不足」の下、目先の「壁」を気にして所得獲得活動を控えることは本人にとっても社会・国家にとっても大きな損失になりかねません。

岸田首相に突き付けられた故・安倍首相の「9年前の発言」とは

この問題については、古くから指摘されてきたにもかかわらず、これまでずっとメスが入らず放置されてきたに等しいといっても過言ではありません。

 

たとえば、2014年3月19日の「第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」の際、「保守派」のイメージがある安倍晋三首相(当時)でさえ、現行制度について「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている」(議事要旨P.13参照)とバッサリと切って捨てています(自身の発言の意義を理解していたかどうかは別ですが)。

 

既に9年前の時点で、巨大与党を率いる首相が明確に指摘していたにもかかわらず、一向に解消されていないということです。国会・政府は怠慢の誹りを免れません。

 

「壁」の問題は、「家庭生活と仕事」「子育てと仕事」を無理なく両立できる環境の整備、男女間の実質的平等・公平とも関連しています。

 

これらの問題を解決しない限り、長引く経済停滞、少子高齢化、年金不安、税収不足といったあらゆる問題の解決は遠のくばかりです。

 

岸田首相の今回の発言が、場当たり的な思い付きからのものでなく、背後にある諸問題とその重要性・切迫性を、真摯かつ的確に把握した上でのものであることを願うばかりです。

 

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