的確なアドバイスが選手と監督の信頼関係を育む
「お前さんのことは前から見ていたんだけれども、バッターボックスの位置をもう少しベースから離れて構えたほうがいいんじゃないか」
「なぜそれが問題となるのか」「そうすることで問題点がどう解消されるのか」といったことを、具体的に伝えるようにしてあげるのです。
すると、選手自身がそれまで気づかなかったことや、思いもよらない視点からのアドバイスに納得し、また練習に励むようになっていく。そうして成長した姿が見てとれたときに、あらためて試合で起用すると、活躍する確率が高くなるというわけです。
このとき大切なのは、「選手には直接声をかけないけれども、遠くから見守り続けてあげる」というスタンスを保つことです。選手からアドバイスを求められたときに、的確に答えられるということは、その選手のことを日頃からよく見ていたからこそできることなのです。 すると選手自身は、このように感じ取ってくれます。
「これまで監督からは技術的なアドバイスをされてこなかったけれども、いつも見ていてくれたからこそ的確に教えてくれたんだな」
結果、それが相互の信頼関係へとつながっていくのです。
家族も巻き込んで選手を大人たちみんなで見守る
また、場合によっては親御さんにも話をしておくようにしています。
「今、〇〇君は少し伸び悩んでいるので試合では起用していません。けれどもあの子なら絶対乗り越えられると信じています。もう少し時間がかかるかもしれませんが、現状を打破してくれると期待していますから、温かく見守ってあげてください」
ときには、こう言っておくと、選手がたとえ落ち込んだ姿を家で見せることがあっても、「監督さんがこの前、こんなことを言っていたな」と親御さんも理解してくれるようになります。
反対に、何も言わなければ、選手だけでなく親御さんも不安になってしまうはずです。そうしたネガティブな要素を排除する意味でも、選手の現状を親御さんに伝えてあげることは、実は指導者にとって大切なことだと私は考えているのです。
■前田の法則
常日頃から選手一人ひとりを観察しておく
前田 三夫
帝京高等学校硬式野球部 名誉監督