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後継者が事業を引き継ぐときにかかる税金負担を猶予する「事業承継税制」。手続きが複雑かつ期日が決まっていることもあり、活用にはいくつもの壁も。今回は個人版、法人版と2種類あるうち、「法人版事業承継税制」を中心に解説していきます。

事業承継税制とはどんな制度?

企業が直面している後継者問題の打開策として作られたのが『事業承継税制』です。制度について詳しく見ていくためにも、まずは事業承継税制について基本的な知識を確認します。

制度設立の背景

中小企業の事業承継は、後継者への株式の贈与・相続によって行われます。しかし経営者が持っている株式の所有権を後継者へ移す際には、多額の税金がかかります。税を負担できず、スムーズな事業承継を進められない企業もあるでしょう。そのような状況の打開策として用意されたのが、事業承継税制です。

 

『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』に基づき、2009年4月に施行された『非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例』と『非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例』を合わせ、事業承継税制と呼ばれています。

 

地域の中小企業がスムーズに事業承継することで、雇用の創出や経済の活性化につながることも期待されている制度です。

後継者問題の解消を促す

『中小企業白書』によると、経営者の年齢が高くても、後継者が決まっていない企業は全国に多々あります。60代で約5割・70代で約4割・80代でも約3割は後継者がいません。一つの要因として、事業承継時に発生する多額の税金が挙げられます。後継者が贈与税や相続税を納める資金を用意できなければ、承継する意思があっても引き継げないでしょう。

 

事業承継税制を活用すれば、後継者は税金の負担を理由に事業承継を諦めずに済みます。後継者問題の解決にもつながる制度です。

事業承継税制活用のメリット

事業承継税制を活用する最大のメリットは『納税免除』です。さらに『相続時精算課税制度』との併用も魅力といえます。要件を満たし免除されている間も、要件を満たせなくなったときにも活用するメリットのある制度です。

相続税や贈与税が納税免除に

制度を利用し要件を満たした後継者が事業承継すると、相続税や贈与税の納付猶予を受けられます。さらに要件を満たしながら経営を続ければ、納税が猶予され続ける仕組みです。猶予期間が続くと、最終的には免除も受けられます。事業承継によって世代交代すると、経営が安定するまで時間がかかる場合もあるでしょう。不安定な状態で多額の税金を納めると、負担が大きく事業の継続が難しくなるケースもあります。支払いを遅らせることにより、納税による資金繰りの悪化を避けられ、経営体制を安定させやすくなるはずです。

相続時精算課税制度と併用できる

『相続時精算課税制度』とともに使えるのも、ポイントといえます。法人版事業承継税制・個人版事業承継税制ともに利用可能です。相続時精算課税制度は、父母や祖父母からの贈与を2,500万円まで非課税にできる制度です。贈与する年の1月1日時点で贈与者は60歳以上・受贈者は18歳以上の場合に利用できます(2022年3月31日以前の贈与では、受贈者は20歳以上の場合に利用可能)。

 

事業承継税制と併用できるようになった利点は、高額な贈与税の課税を避けられることです。事業承継税制の要件を満たせているうちは問題ありませんが、要件を満たせなくなると認定が取り消され、猶予期間が終了してしまいます。このとき基礎控除額110万円の暦年贈与と比べ、2,500万円を控除できる相続時精算課税制度の方が、税額を低く抑えやすい点がメリットです。

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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