中国経済の現状と2023年の注目点…2023年の成長率目標、ゼロコロナ後の消費回復力、不動産関連の成長回復力、IT企業の発展牽引力に注目

中国経済の現状と2023年の注目点…2023年の成長率目標、ゼロコロナ後の消費回復力、不動産関連の成長回復力、IT企業の発展牽引力に注目
(写真はイメージです/PIXTA)

中国の経済成長率は2022年、政府目標「5.5%前後」は未達となりました。2023年は、どうなるのか、ニッセイ基礎研究所の三尾 幸吉郎氏が注目ポイントを解説します。

4. 2023年の注目点

1|2023年の成長率目標

第一に挙げられる注目点は成長率目標をどう設定するのかである。COVID-19など不測の事態に陥らなければ、中国政府は財政金融政策を駆使して実現しようとするからだ。コロナ後の3年を振り返ると(図表-7)、第1波が襲来した2020年は不確実性の高さを踏まえて目標設定を見送ったものの、「プラス成長を維持できる」として財政金融政策を駆使してマイナスを回避する姿勢を示した。

 

2021年はコロナ禍で落ち込んだ反動で高成長が期待できたものの、「6%以上」と低めに設定し、持続可能性を重視した財政金融運営で臨むこととなった。2022年は「5.5%前後」と潜在成長率並みに目標を設定し安定成長を目指す姿勢を示した。しかし、コロナ禍の再発という不測の事態に直面したため途中で断念、その後は財政金融政策を駆使して何とか目標に近づけようとした。

 

それでは2023年はどういうレベルに設定しそうなのだろうか。これまでに公表された各地の目標を見ると(図表-8)、北京市などの一部を除けば5%を超える目標を表明した地方政府が多い。中国全国の成長率目標は3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で表明される。

 

【図表7】【図表8】
【図表7】【図表8】

2|ゼロコロナ後の消費回復力

第二に挙げられる注目点はゼロコロナ後の消費回復力である。中国政府は昨年12月、事実上ゼロコロナ政策からウィズコロナ政策に舵を切った。それに伴いコロナ対策も感染防止から重症化防止に重点が移ったため、各地で感染爆発が起きた。当面は春節(1月22日)に伴う「春運」と呼ばれる交通機関の特別態勢(1月7日~2月15日)が組まれる時期で、今年の人流は昨年の2倍近くに増える見込みだ(図表-9)。そして都市から農村へ帰省する人が多いため、医療体制が脆弱な農村で感染爆発が起きる心配があり、予断を許さない。

 

【図表9】
【図表9】

 

しかし、この難局を乗り切れば、自由を制限されてきた人々が動き出すのは間違いないだろう。特にCOVID-19の影響が大きかったコロナ悪化3業種(交通・運輸・倉庫・郵便業、卸小売業、宿泊飲食業)は2021年に近い急回復になる可能性がある。

3|不動産関連の成長回復力

第三に挙げられる注目点は不動産関連の成長回復力である。昨年11月に中国人民銀行・中国銀行保険監督管理委員会は「金融による不動産市場の安定的で健全な発展のサポートを徹底する通知」(16ヵ条措置)を発表した。それを受けて中国の不動産株は小反発した(図表-10)

 

ただし、不動産株が小反発の域を出ないことが示すように、不動産関連が再び発展を牽引するとの見方は少ない。中国政府は「不動産業の新たな発展モデルへの平穏な移行を後押しする」とは表明したが、「住宅は住むもので、投機対象ではない」というスタンスを崩していない。住宅バブルを再膨張させかねない大幅利下げは期待できないだろう。住宅主要購入層が減り始めていることも、その発展牽引力に期待できない背景である(図表-11)。今後は底打ちするだろうが低成長にとどまると見ている。

 

【図表10】【図表11】
【図表10】【図表11】

4|IT企業の発展牽引力

第四に挙げられる注目点は百度(B)、阿里巴巴(A)、騰訊(T)などIT企業の発展牽引力がどのくらいなのかである。昨年12月に開催された中国経済工作会議では「デジタル経済を大いに発展させ、常態化監督管理レベルを高め、プラットフォーム企業が発展牽引、雇用創出、国際競争の中で力を発揮することを支持する」と表明された。それ以降BAT株は反発に転じた(図表-12)

 

【図表12】
【図表12】

 

およそ2年に及んだIT業界を是正する取り組みにメドが立ったからだ。実際、中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席は「プラットフォーム企業14社の金融業務の特別改善は既にほぼ完了した」としている。しかし、BAT株の反発が小幅にとどまるように、その発展牽引力には不透明感がある。米国でも新たなビジネスモデルが生まれ難くなっており、IT関連株の値動きは冴えない。中国IT企業は米国のビジネスモデルを学び、それを中国の風土に合わせて再構築することで発展してきただけに、もはや毎年2割も成長する時代は終わった可能性がある。当面は1桁台後半の安定成長にとどまると見ている。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年1月27日に公開したレポートを転載したものです。

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